偽作曲(シリーズ4回目):モーツァルト

ヴォルフガング・アマデウスモーツァルトWolfgang Amadeus Mozart、1756年1月27日 - 1791年12月5日)はオーストリアの音楽家。神童といわれ、5才で初めて作曲した。父親のレオポルト・モーツァルトは宮廷音楽家であり、息子のヴォルフガングを様々な音楽の場に連れていき、音楽教育を施した。6歳の時に神聖ローマ皇后マリア・テレジアの御前で演奏したり、またヴェルサイユ宮殿ルイ15世王女マリー・アデライードの部屋にも出入りしていたようである。短い生涯のうちにオペラ、交響曲ピアノソナタなど幅広いジャンルで700曲あまりの曲を作曲した。レクイエムは絶筆。国外旅行により習得した各地の音楽書法を縦横に駆使し、さらにヨハン・クリスティアン・バッハの知遇を得てその影響を受けた。さらにヴィーンに定住後は、ハイドンJ.S.バッハの対位法技法を取り込み、円熟の境地に至った。

 

カサドシュ作曲「モーツァルトの『アデライード協奏曲』」


偽った作曲家マリウス・カサドシュ(Marius Casadesus, 1892 – 1981)はフランスのヴァイオリニスト・作曲家。音楽家一家として知られ、兄アンリは、ヴィオラ奏者・作曲家として、甥ローベールはピアニストとしてよく知られている。また兄アンリも「C.P.Eバッハのヴィオラ協奏曲」「ヘンデルヴィオラ協奏曲」「J.C.バッハのチェロ協奏曲」の偽作が知られている。マリウス・カサドシュの作曲としてヴァイオリンのオーケストラのための交響曲(1951)やバイオリンやチェロのソロ作品があるようだが、これらが現在演奏されることは殆どなく、一般的に知られているのは「アデライード協奏曲」のみといってよい。

このアデライード協奏曲は、1933年にマリウス・カサドシュによって「発見」された。カサドシュによれば、発見されたモーツァルトの自筆譜には、は、1766年5月26日の日付(当時モーツァルトは10歳)でルイ15世の長女アデライード王女への献辞が書かれており、楽譜は2段譜になっていて、上段は独奏パート(に加えてトゥッティ)が、下段はバスが記入されているということだった。しかも、アデライード王女が用いる女性用の小さなバイオリンは「高く調律した方がよく鳴る」ことから、独奏パートは移調楽器扱いされてニ長調で書かれ、下段はホ長調で記譜されているという、マニアックな説明までなされた。が、その一方で、発見された自筆は誰にも決して閲覧させず、カサドシュはそれを「編曲して」出版した。

ショット社によって出版されているこの曲の楽譜においては、この曲が「モーツァルト作曲でない」ことの研究成果が説明されており、さらに1977年には著作権裁判において、カサドシュはついにこの曲が彼の作曲であることを自ら認めたのではあるが、今なおショット社はこの曲に関して「モーツァルト作曲」という体裁を決して崩しておらず、カサドシュに作曲者としての地位を与えていない。

バイオリン独奏部分はニ長調、バスはホ長調で書かれた「モーツァルトの自筆譜」と同等のものから「カサドシュの編曲」には依存せずにピアノソロ用に編曲した2楽章を演奏した。

(Mozart) Adelaide-Konzert for Piano Solo 2nd mov. by akof2 musescore.com

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トゥルンカ教授作曲「モーツァルトの『俺の尻をなめろ、きれいさっぱりと』」

 

真の作曲家、ヴェンツェル・トゥルンカ・フォン・クルゾヴィッツ(Wenzel Trnka von Krzowitz, 1739 - 1791)はチェコの医師、ブダペスト大学医学部教授、アマチュア作曲家。余技として作曲をしていたようで、彼の死後61曲のカノンが見つかり、そのうちいくつかは出版された。モーツァルトとの親交があったことが分かっている。


俺の尻をなめろ、きれいさっぱりと:モーツァルトの作品として知られている「俺の尻を舐めろ」は2曲ある。1つは、K.231 (382c) 6声カノン「Leck mich im Arsch」。タイトルを日本語に訳せは「俺の尻をなめろ」。もう1つは、K.233 (382d) 3声カノン「Leck mir den Arsch fein recht schön sauber」つまり「俺の尻をなめろ、きれいさっぱりと」である。モーツァルトの妻コンスタンツェが、モーツァルトが亡くなって困窮の中、モーツァルトの作品をかき集めて次々出版して糊口を凌いだが、1800年に出版したBreitkopf&Härtelにこの作品が収録されていて、モーツァルト作品だと考えられてきた。下品ネタの大好きなモーツァルトの真骨頂ともいうべきこれらの歌詞は、ブライトコプフ全集においては、前者の曲についてはヘルテル(Gottfried Christoph Härtel, 1763-1827)が作詞した「愉快にやろう、不平や愚痴はつまらない Laßt froh uns sein」という歌詞が、後者もヘルテル作詞の、「わたしゃ酒が何より一番 Nichts labt mich mehr als Wein」に差し替えられていた。

1988年、ヴォルフガング・プラート(Wolfgang Plath)が、"Opera incerta"学会で、K.233 (382d) 3声カノン「俺の尻をなめろ、きれいさっぱりと」について、トゥルンカによる自筆譜を発見したと発表し、この曲の真の作曲者が明らかになった。(なお、プラートの学会発表は、芸術的価値の低い作品のために研究者が少なからぬ時間と労力を注入し、資料調査のために税金を使って旅行をすることが果たして正当化できるのか?という議論のための「芸術的価値の低い作品」の例として、この作品が取り上げたのだそうだ)

ところで、”Leck mich im Arsch” (俺の尻をなめろ)は、ある意味定型的な慣用句なようで、日本語に当てはめれば「糞喰らえ!」と言ったような感じらしい。モーツァルトとその悪友のトゥルンカ教授達が、集まって悪巫山戯(ふざけ)で、こんな下品な曲を高らかに歌って楽しんでいたのではないかと想像される。曲はトゥルンカ教授作でも、歌詞はモーツァルト作だと今でも考えられている。原語では次のような歌詞であって、機械語翻訳しても、十分にそのお下劣は分かるだろう。本日は、日本語訳も付した。御笑覧アレ。

Leck mire den Arsch recht schon,
fein sauber lecke ihn,
fein sauber lecke, leck mire den Arsch
Das ist ein fettigs Begehren,
nur gut mit Butter geschmiert,
den das Lecken der Braten mein tagliches Thun.
Drei lecken mehr als Zweie,
nur her, machet die Prob’
und leckt, leckt, leckt.
Jeder leckt sein Arsch fur sich.

原曲楽譜:Canon for 3 Voices in B-flat major, K.233/382d (Mozart, Wolfgang Amadeus) - IMSLP/Petrucci Music Library: Free Public Domain Sheet Music

(Mozart) Leck mir den Arsch fein recht schön sauber by akof.1 musescore.com

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参照:K.229-348

シンポジウム要旨49-1

Mozart Studies - Google ブックス

Opera incerta: Echtheitsfragen als Problem musikwissenschaftlicher Gesamtausgaben : Kolloquium Mainz 1988 : Bericht im Auftrag des Ausschusses für musikwissenschaftliche Editionen der Konferenz der Akademien der Wissenschaften in der Bundesrepublik Deutschland, 第 11 号
ISBN 3-515-05996-2、頁237から258まで。

 

なんと、私の訳詞で本格的に歌っていただきました(素晴らしい!)。

www.youtube.com



 

モーツァルト作曲「ヴァルゼック伯爵の『レクイエム』」K.626


作曲を偽ったのはフランツ・フォン・ヴァルゼック=シュトゥパッハ(Franz von Walsegg-Stuppach, 1763-1827)オーストリアの地方都市グロッグニッツのストゥパッハ城主、貴族。

この曲は、最晩年に貧窮するモーツァルトが、匿名の人物からゴーストライティングを依頼されて、100ドゥカーテン(およそ250万円?)で請け負って作曲したものである。

1791年8月末に「灰色の服を着た使者」がモーツァルトのもとへやってきて、高額な報酬でレクイエムの作曲を依頼した。前金として半額を受け取ったモーツァルトは10月頃からその作曲に取り組むが、病に苦しみ、「自分自身のためのレクイエム」を作曲していると言いつつ、12月5日亡くなってしまう。

この匿名の依頼主が、フランツ・フォン・ヴァルゼック=シュトゥパッハという人物であったことは1964年にようやく明らかになったのだが、このヴァルゼック伯爵は、有名作曲家に作曲を依頼し、その曲を写譜したうえで、自作の曲として発表してしまう、奇妙な趣味の人物であったらしい。モーツァルトに依頼したレクイエムは、作曲依頼の前年に亡くなったヴァルゼック伯爵夫人のためのものだった。

モーツァルトは作曲半ばに亡くなってしまうが、経済的に行き詰っていたモーツァルトの妻、コンスタンツェはモーツァルトの弟子、フライシュテットラー(Jacob Freystädtler)に、次いでアイブラー (Joseph Eybler)に、さらには、ジュースマイヤー(Franz Süßmayr)に依頼して、1792年3月にレクイエムを補筆・完成させ、ヴァル¬ゼック伯爵に渡して、残りの高額報酬を受け取ることができた。ヴァルゼック伯爵は受け取った楽譜を写譜して、自身の作とした上で、1793年12月14日に、ヴィーナー・ノイシュタット市の修道院付属教会で、夫人アンナの追悼ミサを行いこの曲を指揮した。

ところで、したたかなコンスタンツェは、ヴァルゼック伯爵に隠れてレクイエムの写譜をしており、それらをBreitkopf & Härtel社やプロイセン国王に売却し、結果ブライトコプフ社から、モーツァルトの名前で1800年に出版されることになる。

モーツァルトが8小節目までを作曲し、その後をジュースマイヤーが補筆した第6曲ラクリモーザ(涙の日)の、リストによるピアノ編曲版を演奏しました。
楽譜:

Requiem in D minor, K.626 (Mozart, Wolfgang Amadeus) - IMSLP/Petrucci Music Library: Free Public Domain Sheet Music

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フリース作曲「モーツァルトの子守歌 K.350/Anh.284f/Anh.C8.48」


真 Bernhard Flies, 1770 - ? ドイツの医師(他の作品は全く知られていない)。

モーツァルトの妻コンスタンツェはモーツォアルトが亡くなった後、1809年に外交官ニッセンと再婚した。ニッセンは1828年に「モーツァルト伝」を出版したが、その本の付録部に子守歌をモーツァルトの作品として記載し、コンスタンツェもモーツァルトの作品のようだと認めたことが誤りの原因だといわれている。

ドイツの歌曲研究家モックス・フリートレンダーが、ハンブルクの図書館で1795年頃の曲集の中にフリードリッヒ・ヴィルヘルム・ゴッター(Friedrich Wilhelm Gotter)作詞/フリース作曲と記載してあるのを発見し、真の作曲者が明らかになった。

参考:http://www007.upp.so-net.ne.jp/kanematsu_ped/mozart/Mozart_01.html

Partial Guide to the Memorial Library of Music Collection

 

原曲楽譜:http://imslp.org/wiki/Wiegenlied,_K.350_(Mozart,_Wolfgang_Amadeus)

ピアノソロ用編曲: フリース作曲「子守歌」吉松隆編曲  

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アンゲラー作曲「L.モーツァルトの『おもちゃの交響曲』」

真の作曲家エトムント・アンゲラー(Edmund Angerer, 1740 - 1794)はオーストリアチロル地方の作曲家、ベネディクト会神父。7曲のミサ曲(そのうち4曲はシュタムス修道院の蔵書)、5曲のオラトリオ、7曲のジングシュピールカンタータ、さらに十数曲のリートやアリア、室内楽が残っている。
偽の作曲家その1:フランツ・ヨーゼフ・ハイドン(Joseph Haydn, 1732 - 1809)
偽の作曲家その2:ミヒャエル・ハイドン(ヨーゼフ・ハイドンの弟)(Michael Haydn, 1737 - 1806)
偽の作曲家その3:レオポルト・モーツァルトアマデウスモーツァルトの父)(Leopold Mozart, 1719 - 1787)

 

ヨーゼフ・ハイドン説:

1813年、ライプツィヒのホーフマイスター社(Hoffmeister)から、フランツ・ヨーゼフ・ハイドンの作品として"Kindersymphony"(日本では「おもちゃの交響曲」とするのが定訳)が出版された。
ハイドンの研究家であるカール・フリードリヒ・ポール(Carl Friedrich Pohl)(1809-1868年)が、この「おもちゃの交響曲交響曲」を度重ね研究し、それを1788年ごろのヨーゼフ・ハイドンの作品であると推測されると発表。以降このハイドン作曲説が広く信じられ、ホーボーケン番号Hob. II:47も付与されている。一方、ヨーゼフ・ハイドン自身の作品目録に、この『おもちゃの交響曲』の記載はなく、また地方の「ベルヒテスガーデン」特有の音楽形式をウィーンのハイドンがわざわざとりあげることなど音楽形式上の疑問は多数指摘されていた。

 

ミヒャエル・ハイドン

1938年、エルンスト・フリッツ・シュミット(Ernst Fritz Schmid)という音楽研究家が、、オーストリアメルク修道院蔵書から、ミヒャエル・ハイドンの親友である P・ヴェリガント・レッテンシュタイナー(ベネディクト派)修道士が作成した『おもちゃの交響曲』の写譜が発見され、そこにはミヒャエル・ハイドン作と記されていた。
ミヒャエル・ハイドンは1763年から亡くなる1806年まで、ザルツブルク宮廷楽団のコンサートマスターや大聖堂のオルガニストを務め、ベルヒテスガーデンはザルツブルクの近郊であり、ミヒャエルがベルヒテスガーデン音楽を取り上げるのはそれほど不自然ではない。この後に、様々な手書き写譜が発見され、様々な真の作曲家説が検討されているが、これら写譜同士を比べてなお、ミヒャエル・ハイドンが真の作曲家とする説は今なおある。
しかし、楽譜に記された楽器構成は、知られているおもちゃの交響曲とは異なり、なによりおもちゃに関して何の記載もないところが、この楽譜をオリジナルと考えるには不可解な点。

 

レオポルト・モーツァルト説:

1951年、シュミットが今度は、ミュンヘンバイエルン州立図書館で、マクシミリアン・ラープという写譜家に手による、レオポルト・モーツァルトの作曲と記された、7曲からなるト長調のカッサシオン(Casatio ex G) の写譜を発見する。この7曲のうち3曲(の一部)は、「おもちゃの交響曲」と内容的に酷似していることから、一気にL・モーツァルト作曲説が広まった。

 

エトムント・アンゲラー説:

シュミットはさらに、「モーツァルト年鑑(Mozart-Jahrbuch)」の1952年号において、ハイドン研究家のロビンス・ランドン(「ハイドンのセレナード」の真の作者がホフシュテッターであることをつきとめた研究家)がチロル地方のシュタムス修道院(Stifr Stams)に、おもちゃの交響曲の手書き譜が所蔵され、作曲者名がアンゲラーになっていると主張していることを報告しているが、これはあまり注目されなかったようだ。
そして、1992年、シュタムス修道院から、1770年ごろのエドムント・アンゲラーの作曲と記された「ベルヒトルツガーデン音楽」の楽譜を発見されたという報道があった。それは、1785年ごろ、当時シュタムス修道院の修道士であり、聖歌隊指揮者でもあったシュテファン・パルセッリ(Stefan Paluselli, 1748 - 1805)による写譜で、そこには「ベルヒテスガーデン音楽」(Berchtolds-Gaden Musick)と書かれ、ベルヒテスガーデン名産の木製玩具である、カッコウ(Kuckuck)、ウズラ(Wachtel)、ラッパ(Trompete)、太鼓(Trommel)、ガラガラ(Ratsche)、雌鳥の笛(Orgelhenne)、トライアングル(Cymbelstern)が指定されている。

 

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シュテファン・パルセッリによるおもちゃの交響曲の写譜

 

 

参照:

ミステリー「おもちゃの交響曲」

偽作?疑作?

おもちゃの交響曲 - Wikipedia

「おもちゃの交響曲」の作曲者は誰? - 人生の目的は音楽だ!toraのブログへようこそ

おもちゃの交響曲

楽譜:Kindersinfonie (Angerer, Edmund) - IMSLP/Petrucci Music Library: Free Public Domain Sheet Music

ピアノソロ用楽譜:「L・モーツァルトのおもちゃの交響曲1楽章」轟千尋編 

20180916PleasurePianoPlaying With YAMAHA CFX アンゲラー作曲「L.モーツアルトの『おもちゃの交響曲』」 by AkoFujiwaka | Ako Fujiwaka | Free Listening on SoundCloud

 

 

シチリア舞曲(シリーズ4回目)

前回は、合奏のシチリア舞曲をとりあげたが、今度は、ピアノ独奏用に作曲されたシチリア舞曲をとりあげてみた。

モシュコフスキー/詩的な小品より「シチリアーノ」Op.42-2(Moszkowski "3 Morceaux poétiques" Op.42-2 "Siciliano")

3 Morceaux poétiques, Op.42 (Moszkowski, Moritz) - IMSLP/Petrucci Music Library: Free Public Domain Sheet Music

20170813ピアノマニア弾き合い会 詩的な小品より「シチリアーノ」Op.42 - 2(モシュコフスキー) by AkoFujiwaka | Ako Fujiwaka | Free Listening on SoundCloud

 

シューマン/子どもの為のアルバム Op.68 No.11「シチリアーナ」(Schumann "Album für die Jugend" Op.68 No.11. "Sicilianisch")

Album für die Jugend, Op.68 (Schumann, Robert) - IMSLP/Petrucci Music Library: Free Public Domain Sheet Music

20170813ピアノマニア弾き合い会 子供の為のアルバムより「シチリアーナ」Op.68 - 11(シューマン) by AkoFujiwaka | Ako Fujiwaka | Free Listening on SoundCloud

 

スタマティ/古風なジャンルのシチリアーノ Op.28(Stamaty "Sicilienne dans le genre ancien")

https://lateottomangreekartmusicians.files.wordpress.com/2017/01/stamaty-sicilienne_a-48155.pdf

20170813ピアノマニア弾き合い会 古風なジャンルのシチリアーノOp.28(スタマティ) by AkoFujiwaka | Ako Fujiwaka | Free Listening on SoundCloud

 

これら音源は2018/08/13のピアノマニアの弾きあい会で演奏したものである。

シチリア舞曲(シリーズ3回目)

いよいよ、本命ともいえる、イタリアの作曲家によるシチリア舞曲である。それともう1曲、非常に有名なフォーレ作曲によるものを加えた。これらは全て合奏曲なので、ピアノ向けに編曲したものを取り上げた。


フォーレ/シシリエンヌ(Fauré "Sicilienne" Op.78)作曲者自身によるピアノ編曲版がある。

Sicilienne, Op.78 (Fauré, Gabriel) - IMSLP/Petrucci Music Library: Free Public Domain Sheet Music

20170805 第25回関西ついぴ フォーレ シチリアーナ by AkoFujiwaka | Ako Fujiwaka | Free Listening on SoundCloud


ヴィヴァルディ=藤若亜子/合奏協奏曲ニ短調 RV565 2楽章(Vivaldi "Concerto in D minor" RV 565 )

Vivaldi RV565 Concerto in D Minor 2nd mov. for Piano Solo by akof musescore.com

20170805 第25回関西ついぴ ヴィヴァルディ 合奏協奏曲ニ短調 RV565 2楽章 by AkoFujiwaka | Ako Fujiwaka | Free Listening on SoundCloud

ペルゴレージ=藤若亜子/シチリアーノ(Pergolesi "Siciliana")

Pergolesi - Siciliano for Piano Solo by akof musescore.com

20170805 第25回関西ついぴ ペルゴレージ シチリアーノ by AkoFujiwaka | Ako Fujiwaka | Free Listening on SoundCloud


レスピーギリュートのための古風な舞曲とアリア ピアノソロ用第1組曲5番 (Respighi "Antiche danze et arie per liuto, Suite No.1 No.5")
シチリアーナ作曲者自身によるピアノ編曲版がある。

Antiche danze et arie per liuto, Suite No.1 (Respighi, Ottorino) - IMSLP/Petrucci Music Library: Free Public Domain Sheet Music

20170805 第25回関西ついぴ レスピーギ リュートのための古風な舞曲とアリア シチリアーナ by AkoFujiwaka | Ako Fujiwaka | Free Listening on SoundCloud


これら音源は第25回関西ツイピの会@滋賀栗東さきら(関西ツイッターピアノの会) - で演奏したものである。

Original version of Adélaïde Concerto / アデライード協奏曲のオリジナル版

This concerto was said by Casadesus, the "editor," to have been arranged from a manuscript by the ten-year-old Mozart and he lost his copyright of original "manuscript" version. And Casadesus also reported that "The upper stave is notated in D, the lower in E" in the original manuscript.
https://en.wikipedia.org/wiki/Ad%C3%A9la%C3%AFde_Concerto

In 1977, a litigation concerning his royalties on the orchestration led him to admit that he had written the concerto himself.
http://web.archive.org/web/20151117033056/http://www.casadesus.com/english/famille/Marius_F.html

About the score of orchestration published in 1986 after the litigation, the no copyright are given to Casadesus.
http://www.prestoclassical.co.uk/sm/7241700

このコンチェルトを「発見」したカサドシュによれば、10歳のモーツァルトによる自筆譜から編曲して1933年に出版されたということであり、この時カサドシュは「モーツアルトの手稿譜」についての著作権を放棄している。そしてカサドスはまた、「自筆譜は2段の譜表によっており、そのうち上段は独奏パート(に加えてトゥッティ)が、下段はバスが記入されておち、上段はニ長調で、下段はホ長調で記譜されている」とも述べている。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%87%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%BC%E3%83%89%E5%8D%94%E5%A5%8F%E6%9B%B2

1977年、オーケストレーションのロイヤルティに関する訴訟において、カサドシュは彼自身が作曲したことを認めた。(著作者であることを主張したことは認められるが、それは必ずしも著作権者であることの根拠にはならない)
http://web.archive.org/web/20151117033056/http://www.casadesus.com/english/famille/Marius_F.html

訴訟後の1986年に出版されたオーケストレーションのスコアにおいて、カサドスは依然として著作者とはされていません。
http://www.prestoclassical.co.uk/sm/7241700
https://en.schott-music.com/shop/violinkonzert-in-d-no33168.html

f:id:akof:20170918214019p:plain

http://www2.jasrac.or.jp/eJwid/main.jsp?trxID=F20101&WORKS_CD=0K597993&subSessionID=001&subSession=start(直接リンクで行くとエラーになる)
JASRACのデータベース、J-WIDでのAdélaïde Concertoについての表示「モーツアルト作曲」部分についてはパブリックドメイン

 

(Mozart) Adelaide-Konzert 2nd mov. by akof2 musescore.com

 モーツアルト作曲のオリジナル部分の復元

偽楽譜

サラベール社の楽譜レンタル部門にメール

 

My name is Ako FUJIWAKA, live in Japan

 

I seek a score of Zenta Hermann (that is Augusta Holmès's pseudonym), and I want to get "Six Pièces brèves" of Catalogue number SLB00534300, ISMN: 9790048054974 released in 2002. It is listed at:
http://catsearch.umpgclassical.com/en/operas/six-pieces-breves-3 (注:サラベール社の公式カタログページ)

 

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I had ordered it to Music Shop Europe and Presto Classical. But both shops shipped wrong scores those are Rodolphe Hermann's score FRBNF39719021, released in 1947. It is listed at:
http://catalogue.bnf.fr/ark:/12148/cb397190215 (注:フランスの国立図書館のページ.ここ以外にこの楽譜の情報は見つけられなかった)

 

And Presto Classical have talked to me:
"I have been speaking to the supplier today about this piece of music. According the the publishers this piece has always been Rodolphe Hermann. The listing being credited to Zenta Hermann is a historic listing error that looks like it has been used elsewhere. i can confirm that according to the supplier no piece by Zenta Hermann for Six Pieces Breves exists."

 

 

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I cannot believe on the story, because the paper quality of the score I have gotten are very old seems to be published 1947, and I think it couldn't list after 2002.

 

So, I want ask you whether I can buy or rental of the (pdf data of the) score Zenta Hermann. It is possible, isn't it?

 

Thanks,

Ako FUJIWAKA

 

サラベール社から返信

 

Dear Ms FUJIWAKA

We never published Six pieces brèves by Augusta Holmès (aka Zenta Hermann) and you received from Presto Classical the explanation that I gave to our exclusive Distributor.
Augusta Holmès is dead in 1903 and Salabert signed a contract with Rodolphe Hermann for 6 pièces brèves in 1946!!

I am sorry to disappoint you but it is impossible to provide you the score that you are looking for.

Yours sincerely,

Universal Music Publishing Classique

 

 

「本当の」作曲者名ってどういうことだろう……

「偽作」をテーマに、様々な偽作曲を探しているのだが、ここで「偽作とはなんぞや?」という問題に悩むことになる。できるだけ柔軟に「偽作」を扱うつもりなのだが、、、、 
例えば、今ではベルリオーズの作品として知られている、声楽曲「キリストの幼時」の第一部「羊飼いたちの別れ」をどう考えるか。この曲は当初、ベルリオーズが200年ほど前の曲を発見したかのように発表された。あとで自らそれが自作であることを告白するので、クライスラーと似たパターンでだ。ただし、クライスラーが実在する作曲家を騙ったのに対し、ベルリオーズは架空の「ピエール・デュクレ」なる作曲家を騙った。 
ベルリオーズのこの曲も偽作(だった)ととらえることができよう。「偽作」と断言してる人もいる。  
では、実在しない作曲家名義の作品は、偽作としてよいか、ここが問題になる。女性作曲家が、自身が女性であることを隠すために、偽名で曲を発表してるケースは偽作だろうか?一応、私はこれも偽作と捉えることにする。 
さて、女性作曲家の場合、欧米のこれまでの風習で、結婚すると名前が変わる。この場合、結婚前の作品の作曲家名は、結婚前の名前でなければならないか?あるいは結婚後の作品は、結婚後の名前でなければ、偽作となってしまわないのかという問題が生じる。非常に難しいが、結婚前後の名前はどちらを作曲家名としても、偽作とは言い難いように思える。 
ところが、グスタフマーラーと結婚した、生名アルマ・マリア・シンドラーは、マーラーの死後グロピウスと結婚していて、当然その時の姓はマーラーではないと思うのだが、グロビウス夫人時代の出版の作品も、作曲家名は、「アルマ・マーラー」の作品ということになっているようだ。 
それはさすがに腑に落ちない。「アルマ・マーラー」は作曲用のペンネームなのだろうか。本人がそれを認めてるのなら、そう受け止めなければなるまいが……。

とか思いを巡らしつつ、自分も編曲者名として「藤若亜子」を記していることに気づく。

偽作曲(シリーズ3回目:偽作と金)

体調の問題で予定より2ヶ月延びてしまったが偽作シリーズの第3回目である。

 

ホフシュテッター作曲「ハイドンのセレナーデ Hob.III:17 ; Op.3 No.5」(弦楽四重奏曲 第17番へ長調から 第2楽章)


真の作曲家、ロマン・ホフシュテッター(Roman Hoffstetter, 1742年 - 1815年)は、オーストリアのベネディクト会の修道士。作曲はアマチュアハイドン作にされてしまった6曲の弦楽四重奏曲の他、10曲のミサ曲をはじめとする教会音楽、器楽曲が残っている。
偽わられた作曲家フランツ・ヨーゼフ・ハイドン(Franz Joseph Haydn, 1732年 - 1809年)はオーストリアの作曲家、数多くの交響曲弦楽四重奏曲を作曲し、交響曲の父、弦楽四重奏曲の父と呼ばれている。弦楽四重奏曲第77番第2楽章にも用いられた皇帝讃歌「神よ、皇帝フランツを守り給え」の旋律は、現在ドイツ国歌(ドイツの歌)に用いられている。彼の名前を冠せられた偽作曲も数多くあり、ホーボーケン番号が付いていながら偽作と看做されている曲が約40タイトルある。


『6つの弦楽四重奏曲』(Op.3、Hob.III:13~18)は、ハイドン公認のもと、1801年にプレイエルから出版されたハイドン弦楽四重奏全集に収録されていたため、長い間ハイドン作だと信じられていた。実際には、ハイドンを崇拝し、ハイドンの作風を参考にロマン・ホフシュテッターが書いた曲を、1777年にパリのベユー社が、当時人気を博していたハイドンの名前を勝手に偽って出版してしまったのが真相だ。ベユー社は、ホフシュテッターの作品以外にも、別人の作品をハイドン作として出版するいわくつきの出版社であったようだ。ホフシュテッターは作曲について正当な対価を得られず、経済的には大変困窮していたということだ。

これら6曲の弦楽四重奏は、ハイドンの作風との違いから1939年ごろから偽作の疑いを指摘されていたようだが、1964年に、アラン・タイソン(Alan Tyson)とロビンズ・ランドン(Howard Chandler Robbins Landon)という音楽学者がベユー版の原版を探し出し、作品3-1と3-2の2曲に作曲者名を消した跡を見つけた。それが偽作の決定的な証拠となり、その他のいくつかの証拠からホフシュテッターの作品であることが明らかになった。ハイドン作品として出版されてから187年経ってようやく真の作曲家が明らかになったのだ。

 

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Alan Tyson and H. C. Robbins Landon

"Who Composed Haydn's Op 3?"

 

なお、今日一般的にはこれらの弦楽四重奏曲は、Op.3ということになっているが、ハイドンの時代には出版社が勝手気ままに作品番号を充てたりしていたようで、ベユー社版ではOp.26が充てられていたとのことだ。

参考:ハイドン研究室、弦楽四重奏曲の部屋別室


弦楽四重奏曲としての楽譜:String Quartet in F major, Hob.III:17 (Hoffstetter, Roman) - IMSLP/Petrucci Music Library: Free Public Domain Sheet Music

ハイドンのセレナード」は、あまりに有名で、ピアノ編曲版も数えきれないほど出されているが、私なりに編曲してみた。

(Hoffstetter) Haydn - Serenade for strings for Piano by akohuziwaka musescore.com


2017年7月16日ピアノマニア弾き合い会でのなんちゃって演奏

20170716ピアノマニア弾き合い会「ハイドンのセレナード(ホフステッター)」 by AkoFujiwaka | Ako Fujiwaka | Free Listening on SoundCloud


作曲者不詳「ヘンデルのヴァイオリンソナタ ヘ長調(第3番)HMV370 Op.1-12」2、3楽章

偽られた作曲家ジョージ・フリデリック・ハンデルGeorge Frideric Handel, 1685年 - 1759年)は、ドイツ生まれでイギリスに帰化した作曲家。日本ではドイツ語名の方の「ヘンデル」の方が一般的だ。オペラ、オラトリオなど劇場用の曲を多数書き、イギリスで名声を築いた。オラトリオ「メサイア」、管弦楽組曲「水上の音楽」「王宮の花火の音楽」は現在も人気曲と言えるだろう。一方、真の作曲家は、恐らくヘンデルと同時代の作曲家であろうが、それが誰なのかを知る手掛かりは一切残っていない。

ヘンデルのヴァイオリンソナタは一般的には6曲とされているが、そのうち4曲は偽作でヘンデルの手によるものではないとされている。ヘンデルのヴァイオリンソナタの最初の出版譜は大英図書館に収められているが、ロジェ版(1730年頃の出版)のHMV372イ長調(第5番)Op.1-14、HMV373ホ長調(第6番)Op.1-15には、出版当時の筆跡で「注意,これはヘンデル氏のものではない」(“NB. This is not Mr. Handel's”)と書かれているおり、ウォルシュ版(1732年)のHMV368ト短調(第2番)Op.1-10、HMV370ヘ長調(第3番)Op.1-12当時の筆跡で「ヘンデル氏のソロではない」(“Not Mr. Handel's Solo")と書かれているとのことで、出版当時から大人気作曲家ヘンデルの作品ではないものが、ヘンデル作と偽って楽譜掲載されていることは知られていたらしい。

一般的に、偽作曲疑惑の大抵の決め手は作曲家自身のオリジナル手稿なので、同様にこの大英図書館収蔵の楽譜の“NB. This is not Mr. Handel's”、“Not Mr. Handel's Solo"の書き込みがなされている現物写真を探したのだが、それを見つけることはできなかった。Early Music Performer Issue 11, March 2003 のようなちゃんとした論文にも書かれていることなのでガセの話ではないとは思うが、真贋論争の資料なのだから写真証拠を示すぐらいのことはして欲しいと個人的には思う。

さて、この偽「ヘンデルのヴァイオリンソナタ」4曲が世に出たのは、ヘンデル人気で稼ごうとした出版社の画策によるものであることが分かっている。オランダのジャン・ロジェ出版社のディストリビューターだったウォルシュという人物は、12曲が収められた「ヘンデル作曲の」ソロソナタ集をロジェ社に無断で出版した(ロジェ版と呼ばれているが、ロジェ社の出版ではなく、今でいう海賊版のようなものである)。このロジェ版は問題になったようで、ウォルシュは1732年にヘンデルと正式に楽譜出版契約を結び、ロジェ版掲載の非ヘンデル作のヴァイオリンソナタ2曲(HMV372イ長調(第5番)Op.1-14、HMV373ホ長調(第6番)Op.1-15)を、別のヴァイオリンソナタ2曲に差し替え再度「ヘンデル作曲の」ソロソナタ集を出版した。この正式契約に基づく出版の方がウォルシュ版と呼ばれている。しかし、新たに採録されたHMV368ト短調(第2番)Op.1-10と、HMV370ヘ長調(第3番)Op.1-12もやはり偽作だったというわけである。

なお、これらのヴァイオリンソナタにOp.1がついているのは、ヘンデルの作曲時期が早かったからではない。ヘンデルの時代には出版された作品全てに作品番号が付されたわけではなく、まとまって出版された作品には作品番号が付されることが多かった。ヘンデルの場合は協奏曲集、ソナタ集、オルガン曲集に作品番号が付され、7番まである。そして、いわくつきのソナタ作品集にOp.1がついた経緯は、ウォルシュが1734年以降の新聞広告Op.1と銘打ったからで、1879年にクリュザンダー(Chrysander)という出版社が出版したヘンデル全集(旧全集)第27巻で,ロジェ版とウォルシュ版の両方を合わせ, さらに現在のOp.13にあたる1749年頃のヴァイオリン・ソナタを加え, 全15曲(Op.1-1の異稿を含むと全16曲)からなる「Op.1」を構成したのが定着したということのようだ。

参考:

ヘンデル:ヴァイオリン・ソナタ集 作品についてのノート

ヘンデルのプログラムノート : Flauto diritto

ヘンデルの作品


弦楽四重奏の楽譜:Violin Sonata in F major, HWV 370 (Handel, George Frideric) - IMSLP/Petrucci Music Library: Free Public Domain Sheet Music

さて、この偽「ヘンデルのヴァイオリンソナタ」を紹介する上で、わざわざピアノソロで演奏する意味がありそうな曲を選ぶのに苦慮した。ピアノでその雰囲気が出そうな曲として、HMV370ヘ長調(第3番)Op.1-12の2楽章を選んで編曲してみた。

Violon Sonata in F Major 2nd mov. for piano solo (Opus 1 No. 12) by akohuziwaka musescore.com


2017年7月16日ピアノマニア弾き合い会でのなんちゃって演奏

20170716ピアノマニア弾き合い会「ヘンデルのバイオリンソナタ3番」2楽章 by AkoFujiwaka | Ako Fujiwaka | Free Listening on SoundCloud

が、紹介するに相応しい佳い曲となると、その3楽章の方のような気がしたので、ろくな編曲ではないが、こちらも掲げておく。

Handel - Violin Sonata in F Major mov.3 for Piano Solo (Opus 1 No. 12) by akohuziwaka musescore.com


2017年7月16日ピアノマニア弾き合い会でのなんちゃって演奏

20170716ピアノマニア弾き合い会「ヘンデルのバイオリンソナタ3番」3楽章 by AkoFujiwaka | Ako Fujiwaka | Free Listening on SoundCloud


ポンセ作曲「ヴァイスのバレエ」

偽られたシルヴィウス・レオポルト・ヴァイス(Sylvius Leopold Weiss, 1687年 - 1750年)は、ドイツ後期バロック音楽の作曲家・リュート奏者。多数のリュート曲を書いており、現在も800曲以上が残っている。
真の作曲家マヌエル・マリア・ポンセ・クエラル(Manuel María Ponce Cuéllar, 1882年 - 1948年)は、メキシコの作曲家・音楽教師、ピアニスト。200曲以上のピアノ曲の他、ギター曲、器楽曲を多数残している。メキシコの国民的作曲家であり、1948年にはミゲル・アレマン大統領から「芸術科学国家賞」を音楽家として初めて受賞した。

ポンセは1925年から渡欧し、パリ音楽院でポール・デュカに作曲を師事し、また同地でギター奏者のアンドレス・セゴビアと親交を結んだ。セゴビアは彼の演奏会用の作品をポンセに多数委嘱したが、セゴビアは演奏会が(非ヨーロッパ人の)ポンセ作品ばかりになるのを気にして、バロック時代風や古典派時代風の偽作をポンセに依頼する。

そうした偽作に、ヴァイスの「バレエ」、ヴァイスの「前奏曲ホ長調」、スカルラッティの「古風な組曲」、ヴァイスの「組曲イ短調」がある。セゴヴィアがこれらを演奏して人気を博すと、こうした「古典曲」は著作権上の保護を受けないため、その演奏からすぐに楽譜が起され多数の出版がなされたようだ。一方、ポンセはそうした出版から何ら報酬を受けられず、彼自身は当時困窮を極めた生活を送ったと伝えられている。


参考:

ポンセの偽作について

Manuel Ponce and the Suite in A minor: Its Historical Significance and an Examination of Existing Editions

PONCE, M.M.: Guitar Music, Vol. 2 - Suite in D Major / Suite in A Minor (Holzman)

ポンセのギター曲の楽譜:PDF Classical Guitar Score DVDRom

ピアノ編曲にあたって、カノン化した。

 

www.youtube.com


4声化した編曲も作ってみたが、演奏が難しい割に原曲の良さが薄れてしまって効果が乏しい気がする。

(Ponce) Weiss - Balletto four-voices for piano by AkoFujiwaka musescore.com

 

今回のテーマ「お金」から離れて、演奏機会に恵まれたのでOne More Thingな1曲。

マレー作曲「リュリのガボット

偽られた作曲家、ジャン=バティスト・リュリ(Jean-Baptiste de Lully'、1632年 - 1687年)は、イタリア生まれで、フランスに帰化した作曲家。ルイ14世に気に入られて国王付き器楽曲作曲家に任命され、宮廷貴族向けのバレ、コメディ・バレ、トラジェディ・リリック、オペラで人気を博し、数多くの作品を書いて、宮廷舞曲の音楽形式を大きく変えた。一説によれば、弦楽器の弱音器使用を楽譜で明示したのはリュリが最初だということである。
真の作曲家、マラン・マレー(Marin Marais、1656年 - 1728年)は、フランスの作曲家、指揮者、バス・ヴィオール(ヴィオラ・ダ・ガンバ)奏者。オペラと、数多くのヴィオール作品を残している。ルイ14世の宮廷のヴィオール奏者になっており、リュリより若いが活躍した時期は一部重なっている。

スズキメソードヴァイオリン指導曲集2巻10番、あたらしいバイオリン教本第2巻26番やに「リュリ作曲のガボット」として収録されているため、大半のバイオリニストにはお馴染みの有名曲だが、リュリが書いた楽譜は残っていない。マレーが1686年に出版した、ヴィオール曲集第1巻の第24曲「ロンド」がこの原曲だと言われている。厄介なことにその通奏低音は1689年に出版された別の楽譜に収録されている。

マレーのヴィオール曲集第1巻の楽譜:Pièces de viole, Livre I (Marais, Marin) - IMSLP/Petrucci Music Library: Free Public Domain Sheet Music

マレー作曲のロンドが、いつどのような経緯で「リュリ作曲のガボット」として知られるようになってしまったのかはよく分かっていない。「スズキの教本に誤って収録した鈴木貞一が悪い」という意見が海外の掲示板でさえも見られるが、鈴木貞一が生まれるより前の1800年代には「リュリ作曲のガボット」として出版されているので、鈴木貞一の責任ではないことだけは確かだ。

マレーの残したヴィオール曲集第1巻の第24曲「ロンド」とその通奏低音を、できるだけ忠実に取り入れて、ヴィオラとピアノ用に編曲した。musescoreには移調機能があるので、5度あげればヴァイオリン演奏用にも使えるはずだ。

(Marais - Pièces de viole, Livre I #24 Rondeau) Lully - Gavotte by akohuziwaka musescore.com


2017年7月16日ピアノマニア弾き合い会でのなんちゃって演奏

20170716ピアノマニア弾き合い会「リュリのガボット(マレー)」 by AkoFujiwaka | Ako Fujiwaka | Free Listening on SoundCloud