ラヴェルの「ボレロ」のピアノソロ用編曲

Vladmir Leyetchkissだったか、著名なピアニスト・編曲家の「ボレロ」ピアノソロ版が日本で初演されると話題になっていた。楽譜を探したけれど、見つからなかったので出版はされてないのだろう。

私は、ラヴェルボレロ」のピアノソロ用編曲は、編曲家にとっては永遠のテーマと言ってよいのではないかと思っている。

数々のピアノソロ演奏の中で、極北に至るのは山下洋輔のものだろうが、これは曲を「山下洋輔色」のジャズに上塗りしてるので、ここで取り上げようとしてる編曲の趣旨とはちょっと違う。

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ラヴェルの、動機の音形を変形せずにその音色だけを変えつつ、黎明の静寂から落日のカタルシスにまで変化させる曲構成を、そのままピアノ独奏版に移植するという愚直な編曲を取り上げたいのだ。

ピアノは大枠としては「音色を変えられない楽器」だ。しかし、音量を変えれば自ずと音色も変わる(特に弱音域では多彩な音色変化がある)し、ペダリングによってもアーティキュレーションによっても大きく音色を変化させられる。そして何より縦の和音構成と横への進行のさせ方によって全く違う「音色」になる。ピアノの和音は倍音構成作りに効くのだ。

とはいえ、同じ動機で何種類の音色を作り出せるだろうか。私の持つ手札は、ベートーヴェン チェロソナタ 3番 Op.69 2楽章 スケルツォ ピアノソロ版(←楽譜)で使いつくしたが、全く違う楽器(編成)で鳴ってるかのような大きな音色変化はせいぜい3種類程度だろう。

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ボレロは主旋律と対旋律の組み合わせで、合計9回繰り返されるので、単純に言って18種類の音色の使い分けが必要になる。繰り返し回数を減らすとしても、10種類ぐらいは繰り出さなければ、ラベルのボレロの曲のその曲想を継承できたとは全く言えまい。

ということで、いつかラベルの「ボレロ」をピアノソロ編曲して弾てみたいと思っている。それが原曲に敵うことは永遠にないとしても、編曲を志す者の夢として。