シチリア舞曲(シリーズ3回目)

いよいよ、本命ともいえる、イタリアの作曲家によるシチリア舞曲である。それともう1曲、非常に有名なフォーレ作曲によるものを加えた。これらは全て合奏曲なので、ピアノ向けに編曲したものを取り上げた。


フォーレ/シシリエンヌ(Fauré "Sicilienne" Op.78)作曲者自身によるピアノ編曲版がある。

Sicilienne, Op.78 (Fauré, Gabriel) - IMSLP/Petrucci Music Library: Free Public Domain Sheet Music

20170805 第25回関西ついぴ フォーレ シチリアーナ by AkoFujiwaka | Ako Fujiwaka | Free Listening on SoundCloud


ヴィヴァルディ=藤若亜子/合奏協奏曲ニ短調 RV565 2楽章(Vivaldi "Concerto in D minor" RV 565 )

Vivaldi RV565 Concerto in D Minor 2nd mov. for Piano Solo by akof musescore.com

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ペルゴレージ=藤若亜子/シチリアーノ(Pergolesi "Siciliana")

Pergolesi - Siciliano for Piano Solo by akof musescore.com

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レスピーギリュートのための古風な舞曲とアリア ピアノソロ用第1組曲5番 (Respighi "Antiche danze et arie per liuto, Suite No.1 No.5")
シチリアーナ作曲者自身によるピアノ編曲版がある。

Antiche danze et arie per liuto, Suite No.1 (Respighi, Ottorino) - IMSLP/Petrucci Music Library: Free Public Domain Sheet Music

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これら音源は第25回関西ツイピの会@滋賀栗東さきら(関西ツイッターピアノの会) - で演奏したものである。

Original version of Adélaïde Concerto / アデライード協奏曲のオリジナル版

This concerto was said by Casadesus, the "editor," to have been arranged from a manuscript by the ten-year-old Mozart and he lost his copyright of original "manuscript" version. And Casadesus also reported that "The upper stave is notated in D, the lower in E" in the original manuscript.
https://en.wikipedia.org/wiki/Ad%C3%A9la%C3%AFde_Concerto

In 1977, a litigation concerning his royalties on the orchestration led him to admit that he had written the concerto himself.
http://web.archive.org/web/20151117033056/http://www.casadesus.com/english/famille/Marius_F.html

About the score of orchestration published in 1986 after the litigation, the no copyright are given to Casadesus.
http://www.prestoclassical.co.uk/sm/7241700

このコンチェルトを「発見」したカサドシュによれば、10歳のモーツァルトによる自筆譜から編曲して1933年に出版されたということであり、この時カサドシュは「モーツアルトの手稿譜」についての著作権を放棄している。そしてカサドスはまた、「自筆譜は2段の譜表によっており、そのうち上段は独奏パート(に加えてトゥッティ)が、下段はバスが記入されておち、上段はニ長調で、下段はホ長調で記譜されている」とも述べている。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%87%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%BC%E3%83%89%E5%8D%94%E5%A5%8F%E6%9B%B2

1977年、オーケストレーションのロイヤルティに関する訴訟において、カサドシュは彼自身が作曲したことを認めた。(著作者であることを主張したことは認められるが、それは必ずしも著作権者であることの根拠にはならない)
http://web.archive.org/web/20151117033056/http://www.casadesus.com/english/famille/Marius_F.html

訴訟後の1986年に出版されたオーケストレーションのスコアにおいて、カサドスは依然として著作者とはされていません。
http://www.prestoclassical.co.uk/sm/7241700
https://en.schott-music.com/shop/violinkonzert-in-d-no33168.html

f:id:akof:20170918214019p:plain

http://www2.jasrac.or.jp/eJwid/main.jsp?trxID=F20101&WORKS_CD=0K597993&subSessionID=001&subSession=start(直接リンクで行くとエラーになる)
JASRACのデータベース、J-WIDでのAdélaïde Concertoについての表示「モーツアルト作曲」部分についてはパブリックドメイン

 

(Mozart) Adelaide-Konzert 2nd mov. by akof2 musescore.com

 モーツアルト作曲のオリジナル部分の復元

偽楽譜

サラベール社の楽譜レンタル部門にメール

 

My name is Ako FUJIWAKA, live in Japan

 

I seek a score of Zenta Hermann (that is Augusta Holmès's pseudonym), and I want to get "Six Pièces brèves" of Catalogue number SLB00534300, ISMN: 9790048054974 released in 2002. It is listed at:
http://catsearch.umpgclassical.com/en/operas/six-pieces-breves-3 (注:サラベール社の公式カタログページ)

 

f:id:akof:20170826084125p:image

 

I had ordered it to Music Shop Europe and Presto Classical. But both shops shipped wrong scores those are Rodolphe Hermann's score FRBNF39719021, released in 1947. It is listed at:
http://catalogue.bnf.fr/ark:/12148/cb397190215 (注:フランスの国立図書館のページ.ここ以外にこの楽譜の情報は見つけられなかった)

 

And Presto Classical have talked to me:
"I have been speaking to the supplier today about this piece of music. According the the publishers this piece has always been Rodolphe Hermann. The listing being credited to Zenta Hermann is a historic listing error that looks like it has been used elsewhere. i can confirm that according to the supplier no piece by Zenta Hermann for Six Pieces Breves exists."

 

 

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I cannot believe on the story, because the paper quality of the score I have gotten are very old seems to be published 1947, and I think it couldn't list after 2002.

 

So, I want ask you whether I can buy or rental of the (pdf data of the) score Zenta Hermann. It is possible, isn't it?

 

Thanks,

Ako FUJIWAKA

 

サラベール社から返信

 

Dear Ms FUJIWAKA

We never published Six pieces brèves by Augusta Holmès (aka Zenta Hermann) and you received from Presto Classical the explanation that I gave to our exclusive Distributor.
Augusta Holmès is dead in 1903 and Salabert signed a contract with Rodolphe Hermann for 6 pièces brèves in 1946!!

I am sorry to disappoint you but it is impossible to provide you the score that you are looking for.

Yours sincerely,

Universal Music Publishing Classique

 

 

「本当の」作曲者名ってどういうことだろう……

「偽作」をテーマに、様々な偽作曲を探しているのだが、ここで「偽作とはなんぞや?」という問題に悩むことになる。できるだけ柔軟に「偽作」を扱うつもりなのだが、、、、 
例えば、今ではベルリオーズの作品として知られている、声楽曲「キリストの幼時」の第一部「羊飼いたちの別れ」をどう考えるか。この曲は当初、ベルリオーズが200年ほど前の曲を発見したかのように発表された。あとで自らそれが自作であることを告白するので、クライスラーと似たパターンでだ。ただし、クライスラーが実在する作曲家を騙ったのに対し、ベルリオーズは架空の「ピエール・デュクレ」なる作曲家を騙った。 
ベルリオーズのこの曲も偽作(だった)ととらえることができよう。「偽作」と断言してる人もいる。  
では、実在しない作曲家名義の作品は、偽作としてよいか、ここが問題になる。女性作曲家が、自身が女性であることを隠すために、偽名で曲を発表してるケースは偽作だろうか?一応、私はこれも偽作と捉えることにする。 
さて、女性作曲家の場合、欧米のこれまでの風習で、結婚すると名前が変わる。この場合、結婚前の作品の作曲家名は、結婚前の名前でなければならないか?あるいは結婚後の作品は、結婚後の名前でなければ、偽作となってしまわないのかという問題が生じる。非常に難しいが、結婚前後の名前はどちらを作曲家名としても、偽作とは言い難いように思える。 
ところが、グスタフマーラーと結婚した、生名アルマ・マリア・シンドラーは、マーラーの死後グロピウスと結婚していて、当然その時の姓はマーラーではないと思うのだが、グロビウス夫人時代の出版の作品も、作曲家名は、「アルマ・マーラー」の作品ということになっているようだ。 
それはさすがに腑に落ちない。「アルマ・マーラー」は作曲用のペンネームなのだろうか。本人がそれを認めてるのなら、そう受け止めなければなるまいが……。

とか思いを巡らしつつ、自分も編曲者名として「藤若亜子」を記していることに気づく。

偽作曲(シリーズ3回目:偽作と金)

体調の問題で予定より2ヶ月延びてしまったが偽作シリーズの第3回目である。

 

ホフシュテッター作曲「ハイドンのセレナーデ Hob.III:17 ; Op.3 No.5」(弦楽四重奏曲 第17番へ長調から 第2楽章)


真の作曲家、ロマン・ホフシュテッター(Roman Hoffstetter, 1742年 - 1815年)は、オーストリアのベネディクト会の修道士。作曲はアマチュアハイドン作にされてしまった6曲の弦楽四重奏曲の他、10曲のミサ曲をはじめとする教会音楽、器楽曲が残っている。
偽わられた作曲家フランツ・ヨーゼフ・ハイドン(Franz Joseph Haydn, 1732年 - 1809年)はオーストリアの作曲家、数多くの交響曲弦楽四重奏曲を作曲し、交響曲の父、弦楽四重奏曲の父と呼ばれている。弦楽四重奏曲第77番第2楽章にも用いられた皇帝讃歌「神よ、皇帝フランツを守り給え」の旋律は、現在ドイツ国歌(ドイツの歌)に用いられている。彼の名前を冠せられた偽作曲も数多くあり、ホーボーケン番号が付いていながら偽作と看做されている曲が約40タイトルある。


『6つの弦楽四重奏曲』(Op.3、Hob.III:13~18)は、ハイドン公認のもと、1801年にプレイエルから出版されたハイドン弦楽四重奏全集に収録されていたため、長い間ハイドン作だと信じられていた。実際には、ハイドンを崇拝し、ハイドンの作風を参考にロマン・ホフシュテッターが書いた曲を、1777年にパリのベユー社が、当時人気を博していたハイドンの名前を勝手に偽って出版してしまったのが真相だ。ベユー社は、ホフシュテッターの作品以外にも、別人の作品をハイドン作として出版するいわくつきの出版社であったようだ。ホフシュテッターは作曲について正当な対価を得られず、経済的には大変困窮していたということだ。

これら6曲の弦楽四重奏は、ハイドンの作風との違いから1939年ごろから偽作の疑いを指摘されていたようだが、1964年に、アラン・タイソン(Alan Tyson)とロビンズ・ランドン(Howard Chandler Robbins Landon)という音楽学者がベユー版の原版を探し出し、作品3-1と3-2の2曲に作曲者名を消した跡を見つけた。それが偽作の決定的な証拠となり、その他のいくつかの証拠からホフシュテッターの作品であることが明らかになった。ハイドン作品として出版されてから187年経ってようやく真の作曲家が明らかになったのだ。

 

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Alan Tyson and H. C. Robbins Landon

"Who Composed Haydn's Op 3?"

 

なお、今日一般的にはこれらの弦楽四重奏曲は、Op.3ということになっているが、ハイドンの時代には出版社が勝手気ままに作品番号を充てたりしていたようで、ベユー社版ではOp.26が充てられていたとのことだ。

参考:ハイドン研究室、弦楽四重奏曲の部屋別室


弦楽四重奏曲としての楽譜:String Quartet in F major, Hob.III:17 (Hoffstetter, Roman) - IMSLP/Petrucci Music Library: Free Public Domain Sheet Music

ハイドンのセレナード」は、あまりに有名で、ピアノ編曲版も数えきれないほど出されているが、私なりに編曲してみた。

(Hoffstetter) Haydn - Serenade for strings for Piano by akohuziwaka musescore.com


2017年7月16日ピアノマニア弾き合い会でのなんちゃって演奏

20170716ピアノマニア弾き合い会「ハイドンのセレナード(ホフステッター)」 by AkoFujiwaka | Ako Fujiwaka | Free Listening on SoundCloud


作曲者不詳「ヘンデルのヴァイオリンソナタ ヘ長調(第3番)HMV370 Op.1-12」2、3楽章

偽られた作曲家ジョージ・フリデリック・ハンデルGeorge Frideric Handel, 1685年 - 1759年)は、ドイツ生まれでイギリスに帰化した作曲家。日本ではドイツ語名の方の「ヘンデル」の方が一般的だ。オペラ、オラトリオなど劇場用の曲を多数書き、イギリスで名声を築いた。オラトリオ「メサイア」、管弦楽組曲「水上の音楽」「王宮の花火の音楽」は現在も人気曲と言えるだろう。一方、真の作曲家は、恐らくヘンデルと同時代の作曲家であろうが、それが誰なのかを知る手掛かりは一切残っていない。

ヘンデルのヴァイオリンソナタは一般的には6曲とされているが、そのうち4曲は偽作でヘンデルの手によるものではないとされている。ヘンデルのヴァイオリンソナタの最初の出版譜は大英図書館に収められているが、ロジェ版(1730年頃の出版)のHMV372イ長調(第5番)Op.1-14、HMV373ホ長調(第6番)Op.1-15には、出版当時の筆跡で「注意,これはヘンデル氏のものではない」(“NB. This is not Mr. Handel's”)と書かれているおり、ウォルシュ版(1732年)のHMV368ト短調(第2番)Op.1-10、HMV370ヘ長調(第3番)Op.1-12当時の筆跡で「ヘンデル氏のソロではない」(“Not Mr. Handel's Solo")と書かれているとのことで、出版当時から大人気作曲家ヘンデルの作品ではないものが、ヘンデル作と偽って楽譜掲載されていることは知られていたらしい。

一般的に、偽作曲疑惑の大抵の決め手は作曲家自身のオリジナル手稿なので、同様にこの大英図書館収蔵の楽譜の“NB. This is not Mr. Handel's”、“Not Mr. Handel's Solo"の書き込みがなされている現物写真を探したのだが、それを見つけることはできなかった。Early Music Performer Issue 11, March 2003 のようなちゃんとした論文にも書かれていることなのでガセの話ではないとは思うが、真贋論争の資料なのだから写真証拠を示すぐらいのことはして欲しいと個人的には思う。

さて、この偽「ヘンデルのヴァイオリンソナタ」4曲が世に出たのは、ヘンデル人気で稼ごうとした出版社の画策によるものであることが分かっている。オランダのジャン・ロジェ出版社のディストリビューターだったウォルシュという人物は、12曲が収められた「ヘンデル作曲の」ソロソナタ集をロジェ社に無断で出版した(ロジェ版と呼ばれているが、ロジェ社の出版ではなく、今でいう海賊版のようなものである)。このロジェ版は問題になったようで、ウォルシュは1732年にヘンデルと正式に楽譜出版契約を結び、ロジェ版掲載の非ヘンデル作のヴァイオリンソナタ2曲(HMV372イ長調(第5番)Op.1-14、HMV373ホ長調(第6番)Op.1-15)を、別のヴァイオリンソナタ2曲に差し替え再度「ヘンデル作曲の」ソロソナタ集を出版した。この正式契約に基づく出版の方がウォルシュ版と呼ばれている。しかし、新たに採録されたHMV368ト短調(第2番)Op.1-10と、HMV370ヘ長調(第3番)Op.1-12もやはり偽作だったというわけである。

なお、これらのヴァイオリンソナタにOp.1がついているのは、ヘンデルの作曲時期が早かったからではない。ヘンデルの時代には出版された作品全てに作品番号が付されたわけではなく、まとまって出版された作品には作品番号が付されることが多かった。ヘンデルの場合は協奏曲集、ソナタ集、オルガン曲集に作品番号が付され、7番まである。そして、いわくつきのソナタ作品集にOp.1がついた経緯は、ウォルシュが1734年以降の新聞広告Op.1と銘打ったからで、1879年にクリュザンダー(Chrysander)という出版社が出版したヘンデル全集(旧全集)第27巻で,ロジェ版とウォルシュ版の両方を合わせ, さらに現在のOp.13にあたる1749年頃のヴァイオリン・ソナタを加え, 全15曲(Op.1-1の異稿を含むと全16曲)からなる「Op.1」を構成したのが定着したということのようだ。

参考:

ヘンデル:ヴァイオリン・ソナタ集 作品についてのノート

ヘンデルのプログラムノート : Flauto diritto

ヘンデルの作品


弦楽四重奏の楽譜:Violin Sonata in F major, HWV 370 (Handel, George Frideric) - IMSLP/Petrucci Music Library: Free Public Domain Sheet Music

さて、この偽「ヘンデルのヴァイオリンソナタ」を紹介する上で、わざわざピアノソロで演奏する意味がありそうな曲を選ぶのに苦慮した。ピアノでその雰囲気が出そうな曲として、HMV370ヘ長調(第3番)Op.1-12の2楽章を選んで編曲してみた。

Violon Sonata in F Major 2nd mov. for piano solo (Opus 1 No. 12) by akohuziwaka musescore.com


2017年7月16日ピアノマニア弾き合い会でのなんちゃって演奏

20170716ピアノマニア弾き合い会「ヘンデルのバイオリンソナタ3番」2楽章 by AkoFujiwaka | Ako Fujiwaka | Free Listening on SoundCloud

が、紹介するに相応しい佳い曲となると、その3楽章の方のような気がしたので、ろくな編曲ではないが、こちらも掲げておく。

Handel - Violin Sonata in F Major mov.3 for Piano Solo (Opus 1 No. 12) by akohuziwaka musescore.com


2017年7月16日ピアノマニア弾き合い会でのなんちゃって演奏

20170716ピアノマニア弾き合い会「ヘンデルのバイオリンソナタ3番」3楽章 by AkoFujiwaka | Ako Fujiwaka | Free Listening on SoundCloud


ポンセ作曲「ヴァイスのバレエ」

偽られたシルヴィウス・レオポルト・ヴァイス(Sylvius Leopold Weiss, 1687年 - 1750年)は、ドイツ後期バロック音楽の作曲家・リュート奏者。多数のリュート曲を書いており、現在も800曲以上が残っている。
真の作曲家マヌエル・マリア・ポンセ・クエラル(Manuel María Ponce Cuéllar, 1882年 - 1948年)は、メキシコの作曲家・音楽教師、ピアニスト。200曲以上のピアノ曲の他、ギター曲、器楽曲を多数残している。メキシコの国民的作曲家であり、1948年にはミゲル・アレマン大統領から「芸術科学国家賞」を音楽家として初めて受賞した。

ポンセは1925年から渡欧し、パリ音楽院でポール・デュカに作曲を師事し、また同地でギター奏者のアンドレス・セゴビアと親交を結んだ。セゴビアは彼の演奏会用の作品をポンセに多数委嘱したが、セゴビアは演奏会が(非ヨーロッパ人の)ポンセ作品ばかりになるのを気にして、バロック時代風や古典派時代風の偽作をポンセに依頼する。

そうした偽作に、ヴァイスの「バレエ」、ヴァイスの「前奏曲ホ長調」、スカルラッティの「古風な組曲」、ヴァイスの「組曲イ短調」がある。セゴヴィアがこれらを演奏して人気を博すと、こうした「古典曲」は著作権上の保護を受けないため、その演奏からすぐに楽譜が起され多数の出版がなされたようだ。一方、ポンセはそうした出版から何ら報酬を受けられず、彼自身は当時困窮を極めた生活を送ったと伝えられている。


参考:

ポンセの偽作について

Manuel Ponce and the Suite in A minor: Its Historical Significance and an Examination of Existing Editions

PONCE, M.M.: Guitar Music, Vol. 2 - Suite in D Major / Suite in A Minor (Holzman)

ポンセのギター曲の楽譜:PDF Classical Guitar Score DVDRom

ピアノ編曲にあたって、カノン化した。

 

www.youtube.com


4声化した編曲も作ってみたが、演奏が難しい割に原曲の良さが薄れてしまって効果が乏しい気がする。

(Ponce) Weiss - Balletto four-voices for piano by AkoFujiwaka musescore.com

 

今回のテーマ「お金」から離れて、演奏機会に恵まれたのでOne More Thingな1曲。

マレー作曲「リュリのガボット

偽られた作曲家、ジャン=バティスト・リュリ(Jean-Baptiste de Lully'、1632年 - 1687年)は、イタリア生まれで、フランスに帰化した作曲家。ルイ14世に気に入られて国王付き器楽曲作曲家に任命され、宮廷貴族向けのバレ、コメディ・バレ、トラジェディ・リリック、オペラで人気を博し、数多くの作品を書いて、宮廷舞曲の音楽形式を大きく変えた。一説によれば、弦楽器の弱音器使用を楽譜で明示したのはリュリが最初だということである。
真の作曲家、マラン・マレー(Marin Marais、1656年 - 1728年)は、フランスの作曲家、指揮者、バス・ヴィオール(ヴィオラ・ダ・ガンバ)奏者。オペラと、数多くのヴィオール作品を残している。ルイ14世の宮廷のヴィオール奏者になっており、リュリより若いが活躍した時期は一部重なっている。

スズキメソードヴァイオリン指導曲集2巻10番、あたらしいバイオリン教本第2巻26番やに「リュリ作曲のガボット」として収録されているため、大半のバイオリニストにはお馴染みの有名曲だが、リュリが書いた楽譜は残っていない。マレーが1686年に出版した、ヴィオール曲集第1巻の第24曲「ロンド」がこの原曲だと言われている。厄介なことにその通奏低音は1689年に出版された別の楽譜に収録されている。

マレーのヴィオール曲集第1巻の楽譜:Pièces de viole, Livre I (Marais, Marin) - IMSLP/Petrucci Music Library: Free Public Domain Sheet Music

マレー作曲のロンドが、いつどのような経緯で「リュリ作曲のガボット」として知られるようになってしまったのかはよく分かっていない。「スズキの教本に誤って収録した鈴木貞一が悪い」という意見が海外の掲示板でさえも見られるが、鈴木貞一が生まれるより前の1800年代には「リュリ作曲のガボット」として出版されているので、鈴木貞一の責任ではないことだけは確かだ。

マレーの残したヴィオール曲集第1巻の第24曲「ロンド」とその通奏低音を、できるだけ忠実に取り入れて、ヴィオラとピアノ用に編曲した。musescoreには移調機能があるので、5度あげればヴァイオリン演奏用にも使えるはずだ。

(Marais - Pièces de viole, Livre I #24 Rondeau) Lully - Gavotte by akohuziwaka musescore.com


2017年7月16日ピアノマニア弾き合い会でのなんちゃって演奏

20170716ピアノマニア弾き合い会「リュリのガボット(マレー)」 by AkoFujiwaka | Ako Fujiwaka | Free Listening on SoundCloud

Misattributed Music Series 3: "Money"

Hofstätter's composition "Haydn's serenade Hob.III: 17; Op.3 No.5" (String Quartet No. 17 F major 2nd movement)


The true composer, Roman Hoffstetter (1742 - 1815) was a monk of the Benedictine Association in Austria, and was not a professional composor. In addition to the six string quartets that have been misattributed to Haydn, christian musics and instrumental musics, including ten songs of Mass are known.
The misattirbuted composer, Franz Joseph Haydn (1732 - 1809) was an Austrian, composed numerous symphonies, string quartets, and is called "the father of symphonies" or "the father of string quartet". The melody of the emperor hymn "Gott erhalte Franz den Kaiser" which was also used for String Quartet No. 77, 2nd movement is currently being used for the German National Anthem. There are many false musics that are named after his name, and about 40 titles with Hoboken number are nowadays regarded as counterfeit.


"Six String Quartets" (Op. 3, Hob.III: 13 - 18) was recorded in the Haydn String Quartet Complete Works published by Pleyel in 1801 under the authorization of Haydn, so they were believed as Haydn' works a long time. In fact, Roman Hofstatter who worshiped Haydn, wrote the musics in reference to the style of Haydn, and they were published in the name of Haydn who was popular at the time by Bailleux in Paris in 1777, and the true composer has gone. Bailleux also seems to have been a stingy publisher that had published works by another person as works of Haydn. Hofstätter was said that he could not get legitimate consideration for composition and was economically extremely distressed.

These six strings of string quartets seemed suspected of counterfeit from around 1939 due to the difference with Haydn's style, and in 1964, Alan Tyson and Howard Chandler Robbins Landon discovered the original of the Bailleux version and found traces of erasing the composer's name in the two works 3-1 and 3-2. this evidence and some other discussions definitively prove the forgery, and it was revealed that it is a work of Hofstätter. After 187 years since its publication as a Haydn's work, a true composer was finally revealed.

 

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Alan Tyson and H. C. Robbins Landon

"Who Composed Haydn's Op 3?"

 

Today these string quartets are said to be Op.3 in general, but in the era of Haydn, publishers seemed to have devoted their work numbers without permission, Op.26 was devoted to it.

Reference: ハイドン研究室、弦楽四重奏曲の部屋別室


Score: String Quartet in F major, Hob.III:17 (Hoffstetter, Roman) - IMSLP/Petrucci Music Library: Free Public Domain Sheet Music

"Haydn's serenade" is so famous that arranged versions for piano are countlessly counted, but I tried arranging it for myself.

(Hoffstetter) Haydn - Serenade for strings for Piano by akohuziwaka musescore.com


My performance at playing piano mania playing parties 2017.7.16.

20170716ピアノマニア弾き合い会「ハイドンのセレナード(ホフステッター)」 by AkoFujiwaka | Ako Fujiwaka | Free Listening on SoundCloud

編曲はそんな容易いものじゃない

5月下旬に健康上の問題が発生し、合奏の約束や、弾き合い会のエントリーを全てキャンセルする事態となってしまった。各方面に迷惑をかけてしまった。

療養中は編曲ぐらいしようかと思っていたが、体調不良の時はその気力も起きないもので、結局何もしないまま、時が過ぎ、ようやく休養明けとなって、ピアノ練習も再開しはじめた。元から下手なのは言うまでもないが、練習を休むととんでもない惨状になるが、ある意味自分の何がダメなのかがより明確になるとも受け止めたりしてる。

私のだめなところは、端的に、ピアノ演奏の経験値が低いことで、定型的な音の移行について、手が全くついていかないことである。いちいち指使いを考えなくても、無理のない運指がほぼ初見でできるのだから、それが典型的な曲展開であることは分かっているのだ。しかし、それが全く弾けないのは、そうした典型的な進行の曲さえ、ろくに練習がなされてないから手に馴染んでないだけのことなのだ。

 

閑話休題シチリア舞曲や、偽作曲を手掛けきてるわけだが、これらの多くはピアノ曲ではないので、ピアノ用の編曲が必要になる。これらは有名曲なのでピアノ編曲も数多くあると予想されるので、楽譜を探すわけだが、「てんで分かってない」編曲が世の中に溢れかえっていて呆れる。

原曲の音をできるだけそのままピアノ用楽譜に持ってきて、指がとどくように音を減らして「編曲でござい」というのばかりなのである。そんな単純作業はいまや機械でできるはずだが、ピアノは他の楽器とはその特性が違うのだから、そんな単純移植しただけでは曲をつまらなくするだけなのに。そういうのは原作の冒涜だろうと思う。

酷い「編曲もどき」の例をあげると色々問題が生じるだろうから、ちっとは頭を使った方を紹介しよう。

ハイドン作、あるいはレオポルトモールアルト作だとされた偽作曲「おもちゃの交響曲」のピアノ編曲版はそこここに転がっているが、その殆どは左手での8分音符の同音連打が延々と続くおバカ編曲である。この曲の「曲想」をしっかり受け止めて編曲すると、例えばこうなる。

www.youtube.com

 zen-on piano solo PP-564 レオポルトモーツァルト:おもちゃの交響曲 全音楽譜出版社

編曲は轟千尋氏だそうだ。全音ピアノピース(PP-564) 『レオポルト・モーツァルト:おもちゃの交響曲』

とはいえ、何をどうやっても、原曲の味をそのまま活かしてピアノ曲にはならないと思える曲もあって、ヴィヴァルディの合奏協奏曲 RV 565 2楽章はどうにもならないと諦めた。ダメな編曲の典型的な形である。

 

Vivaldi RV565 Concerto in D Minor 2nd mov. for Piano Solo by akof musescore.com

 


しかし、

チェロとハープのデュエット用の編曲

Concerto V in D Minor (BWV 596) for Cello & Harp by Mike Magatagan musescore.com

 

 を聴いて、この曲をこんな素敵に編曲ができるのか思わされた。ならば、ピアノ編曲ならどういう形が可能かと、自分がこれまでに編曲した曲、これから編曲しようとしてる曲のピアノ編曲版を探して学ぼうと考えた。

そこで見つけたのが、

www.youtube.com


Caccini "Ave Maria" カッチーニアヴェマリア 吉松隆編曲 

である。打ちのめされた。これを聴いて祈らずにはおれようか。プロの編曲とはここまでやるのか。楽譜はこれである。

ピアノ編曲集 吉松隆 アヴェマリア/子守歌 楽譜 – 2010/7/29 吉松 隆 (編集), 田部 京子 (編集) 

いきなり、こんな具合にはいくはずもないが、改めてヴィヴァルディの合奏協奏曲 RV 565 2楽章に取り組んで、こうなった。

Vivaldi RV565 Concerto in D Minor 2nd mov. for Piano Solo by AkoFujiwaka musescore.com

まだまだ満足はいかないが、これが第1歩である。

 

ポンセのギター曲「バレエ」は、カノンを導入して編曲した。

Ponce Weiss - Balletto by akof.1

これなら人に見せても許されるだろうレベルではないだろうか。


しかし……数々の名編曲を残したGodowskyにも、こんな怪作があるのだぁ。
Symphony No.40 in G minor, K.550 for piano solo