カタルーニャのための祈り

10月のはじめ、NHKのFMラジオ放送をつけたところ、スペインを特集したと思われる曲が続いて流れた。
タレガ「アルハンブラの思い出」 、ファリャ「スペイン舞曲 第1番」 、ロドリーゴ「アランフェス協奏曲」 ……はぁ??どういうこと?スペイン内戦とフランコ政権独裁の苦難と立ち向かったカタルーニャの作曲家をわざと外したラインナップではないか。カタルーニャ住民投票と、そのあとのスペイン政府の暴虐の行いの直後にこれは酷いではないか。見損なったよ、NHK。「国営放送ではない」といいつつ結局は「政府の犬」を自認してるわけか……

 

日本人がこんな蛆虫のような奴ばかりだと思われては、大和民族の名がすたるので、たとえたった一人であっても構わないのでカタルーニャの人々の心安らかなる日がくるよう祈ろうと思った。「日本国」のご都合なんか捨て置いて、私のやり方で。

 

「収穫人たち」(カタルーニャ国家)

“この歌は、スペインの圧制に対して起きた1640年の収穫人戦争時に生まれた。現在の歌詞は、1882年に発表された文献学者マヌエル・ミラーのRomancerillo catalánに収められていた、17世紀のロマンセを元として、1899年にエミリ・グアニャベントが創作した。ロマンセの詩もグアニャベントの歌詞も、どちらも民衆に広まった。しかし、現在の歌詞は作詞者グアニャベントの政治的な意図が強い。音楽は、古くから歌い継がれてきた民謡のメロディーを元に、フランセスク・アリオが作曲したものである。”
“1993年2月25日、カタルーニャ自治州議会は、公式に『収穫人たち』を国歌に制定した。”

収穫人たち - Wikipedia

 

Catalunya triomfant,
tornarà a ser rica i plena.
Endarrera aquesta gent
tan ufana i tan superba.

Bon cop de falç,
Bon cop de falç,
Defensors de la terra!
Bon cop de falç!

Ara és hora, segadors.
Ara és hora d'estar alerta.
Per quan vingui un altre juny
esmolem ben bé les eines.

Bon cop de falç,
Bon cop de falç,
Defensors de la terra!
Bon cop de falç!

Que tremoli l'enemic
en veient la nostra ensenya.
Com fem caure espigues d'or,
quan convé seguem cadenes.

Bon cop de falç,
Bon cop de falç,
Defensors de la terra!
Bon cop de falç!

勝利者カタルーニャ
再び豊かに栄えよ
思い上がった傲慢不遜な
奴らを退却させるのだ

鎌を振れ
鎌を振れ
国の守り手よ!
鎌を振れ!

収穫人たちよ、今がその時だ
今や警告を発する時だ
来年の6月のために、
我々の武器を研ごう

鎌を振れ、
鎌を振れ、
国の守り手よ!
鎌を振れ!

我らの旗を目にして
奴らは震え上がっている
まさに黄金色の小麦を刈り取るように、
時が来れば、我らを拘束する鎖を断ち切るのだ

鎌を振れ、
鎌を振れ、
国の守り手よ!
鎌を振れ!

 

 

 様々な楽譜、編曲があり、ヘビーメタルバージョンは大きく話題になった。

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また、この3拍子基調の原曲を4拍子に変えたギターとチェロ用編曲

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には感銘を受けたので、そのままピアノ版に落としてみた。

Els Sagados (Himne Nacional de Catalunya) by akof.3 musescore.com


ただ、祈るという観点からは、できれば原典に近いものが良かろうと思い、1899年の出版物の表紙に描かれていたらしい楽譜

www.todocoleccion.net


から、採譜したものを演奏したい。

Els Segadors 収穫人たち by akof.3 musescore.com


 

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カタルーニャは、画家であるダリや建築家のガウディのように多くの芸術家を輩出しているが、中でも作曲家に関してはスペインの他の地方を凌駕しており、ウィキペディアの「スペインの作曲家」にあげられている99人のうち23人が、ピティナピアノ曲事典の「スペイン出身の作曲家の一覧」にあげられている25人のうち8人がカタルーニャの出身である。


恐らく、

といった作曲家の名前ははクラシック音楽ファンならどこかで耳にしたことがあるのではなかろうか。

今回は、カタルーニャ出身で、スペイン内戦やフランコ政権のカタルーニャ弾圧の中を苦しみつつ音楽活動した

から、カタルーニャの魂を感じさせる曲をとりあげることにした。

マニュエル・ブランカフォルトとフェデリコ・モンポウ

モンポウブランカフォルトは親友同士であり、2人とも一時的にはフランスなどに拠点を移すことはあったが、基本的にはカタルーニャバルセロナで活動し続けた。ともに内省的な曲想を特徴としている。今年は2人の没後30年のアニバーサリーイヤーである。

マニュエル・ブランカフォルト 「内なる歌」第2集よりNo.2「秘め事」(1919)

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フェデリコ・モンポウ 前奏曲 第9番(1943)

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この後に掲げるカザルスの曲も含めて、曲想が互いに近いものを選んだ。ブランカフォルトは後期になると晦渋な和音進行のものが多いため、若いころの作品である。シンプルで静かな主題音型が2回繰り返された後、音域や音響が大きく広がって盛り上がり、そして主題音型に戻って静かに消え入るように終わる。

パブロ・カザルス

カザルスは、上述の2人より20歳以上年長であり、スペイン内戦になる前には、カザルス三重奏団など、確固たる世界的地位を獲得していた。スペイン内戦でフランスに亡命し、カタルーニャ語の使用を禁ずるなどしたフランコの弾圧に抵抗し、「平和」を求める明確な政治的メッセージを発しつつ活動をした。亡命後カタルーニャに戻ることなく上記の2人とは対照的な生き方をとった。

パブロ・カザルス「鳥の歌」

「鳥の歌」は、カタルーニャ民謡をカザルスが採譜・編曲し、1945年から平和を求める象徴として彼のアンコールピースとして演奏された。1971年10月24日、ニューヨーク国連本部で国連の日を祝う演奏会が開催され、94歳のカザルスはそこに招待され国連平和賞を贈られた。そしてカザルスは自作の国連賛歌を含め、いくつかの曲の指揮をした。そして、最後に伝説的なスピーチを行い、フランコ政権支持国では決して演奏しなかった封印を解き、「鳥の歌」をチェロ演奏した

Casals “El Cant dels Ocells” live on 24 October 1971 at U.N. Day
I have not played the cello in public for many years, but I feel that the time has come to play again. I am going to play a melody from Catalan folklore: El cant dels ocells – The Song of the Birds. Birds sing when they are in the sky, they sing: “Peace, Peace, Peace”, and it is a melody that Bach, Beethoven and all the greats would have admired and loved. What is more, it is born in the soul of my people, Catalonia.

「長い間、公共の場でのチェロの演奏を行わずにきました。しかし、今一度演奏する時が来たという思いを感じています。これから、カタルーニャ民謡の一節、El cant dels ocells-『鳥の歌』という曲を演奏します。
空に舞う鳥たちは、「平和、平和、平和」と唄います。この詩こそは、バッハ、ベートーベンそして全ての偉人たちも賞賛し、愛した詩になります。そしてこの歌は、私の祖国カタルーニャの魂なのです。」

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月が最南を通る夜に

「鳥の歌」は、クリスマスキャロル(新版2000年刊38番・新聖歌94番)だそうです。
“夜が明けると小鳥達が歌い始めました。「夜が明けて、小鳥たちは歌い始める、良い知らせを。《ベツレヘムに、かわいい幼な子が生れ給うた。この方こそ、神の独り子》と。」”

私の理解では、クリスマスというのは世界中にある「冬至祭り」の呼び名の1つなので、どんな民族、宗教の人も等しく祝福されるものだろうと考えています。

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メリー・クリスマス!カタルーニャに祝福のあらんことを。