被害者のプライバシー

日本の刑法なんて、ガタガタのボロボロだし、その運用ときたらデタラメだけれど、敢えてそれを参照するならば。

 

性犯罪の被害者のプライバシー(伏せた「姓」など)を暴いたり、暴いたと称する噂の内容を公然と示すことは、犯罪だ。名誉毀損罪は、親告罪ではあるが、親告がなければ公訴を提起できないというだけで、親告がなくても罪に当たる行為は犯罪のはずだ。

 

一方、性犯罪の加害者と疑われてる人物の、疑われている未だ起訴されていない犯罪に関わる、立証可能な「事実」を指摘することは、名誉毀損にはならない。

 

疑われている犯罪そのものが結果的には真実としては存在しない可能性があっても、法はそのように規定しているので、被害者の未公表の個人名を暴くのは犯罪で、加害の被疑者の個人名を示すことについては、然るべき文脈であれば犯罪になることを免れうる。

 

単にそれが現行の法律でのルールというだけだ。

 



 

シチリア舞曲の偽作曲(シリーズ2回目&シリーズ2回目)

5月は集中的にシチリア舞曲に取り組むつもり。その一方で、ピアノマニア弾き合い会では積極的に偽作曲をとりあげる予定。ということで、5月13日のピアノマニア弾き合い会では、シチリア舞曲の偽作曲ばかり取り上げた。

ドゥシュキン作曲「パラディスのシチリアンヌ」

偽られた作曲家、マリア・テレジア・フォン・パラディス( Maria Theresia von Paradies or Paradis, 1759年 - 1824年 )は、オーストリアの女性音楽家(ピアニスト、歌手 、作曲家)。幼児期に視力を失いながらも、広く演奏活動を行い、また作曲、音楽教育にも多くの功績がある。作曲においては、オペラを始めとする劇音楽、カンタータ、器楽曲と広い分野に渡って作品が残っている。1777年頃から作られた4つのピアノ・ソナタが、ピエトロ・ドメニコ・パラディーシ(Pietro Domenico Paradisi)の曲だとされてしまうなど、何かと偽作に巻き込まれてしまっている人物である。
真の作曲家サミュエル・ドゥシュキン(Samuel Dushkin, 1891年 – 1976年 )はポーランド出身のアメリカ合衆国のヴァイオリニスト。

ドゥシュキンは「パラディスのシチリアーナ」を発見したとしてこの曲を公表し、パラディスの代表作として広く世にしれることになったが、この舞曲の音楽言語が18世紀ウィーン古典派の時代様式にそぐわないことから、現在ではウェーバーのソナタ(Op.10 No.1:J.99)を原曲としたドゥシュキンの手による(編)曲だと言われている。21小節目や23小節目の、16分音符でこぶしを回すような部分が特徴的だが、どうもここが18世紀古典派のやり方ではないのかもしれないという気がする。


ドゥシュキンによる原曲はヴァイオリンとピアノのために書かれており、楽譜は imslp にある。

Sicilienne in E-flat major (Paradis, Maria Theresia von) - IMSLP/Petrucci Music Library: Free Public Domain Sheet Music

原曲バージョンでの演奏:

20160903第21回関西ついぴ パラディスのシチリアーナ(ドゥーシュキン) by AkoFujiwaka | Ako Fujiwaka | Free Listening on SoundCloud

ピアノ独奏用に編曲した楽譜と演奏は次の通り。

(Dushkin) Paradis Sicilienne - for Piano solo by akof musescore.com

20170513 ピアノマニア弾き合い会 パラディスのシチリアーナ(ドゥシュキン) by Ako Fujiwaka | Free Listening on SoundCloud

 

ドゥシュキンが元ネタに使った、Carl Maria von Weberの6つのソナタOp.1, No.1, 2楽章Romanzeについてもごく荒っぽくピアノで弾けるようにして(下記)、弾いてみた。16分音符の「こぶし」の部分はほぼそのままである。Romanzeというタイトルにふさわしいゆったりとした曲想なのだが、それにしては曲展開がせわしなさ過ぎる印象である。その点、ドゥシュキンの編曲が上手いと私は思う。

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20170513 ピアノマニア弾き合い会 ウェーバー ソナタ Op.10 No1 2楽章 by AkoFujiwaka | Ako Fujiwaka | Free Listening on SoundCloud

 

クライスラー作曲「フランクールのシチリアンヌ」

偽られた作曲家フランソワ・フランクール(François Francœur、1698年 - 1787年 )は、フランスの作曲家。ヴァイオリンソナタやオペラの作品がいくつか残っている。

真の作曲家は、ドゥシュキンが師事したこともあるフリッツ・クライスラー(Fritz Kreisler, 1875年 - 1962年 )は、オーストリア出身(後にフランスを経てアメリカ国籍)の世界的ヴァイオリニスト、作曲家。

クライスラーは、演奏旅行をしながら各地の図書館の古い楽譜をあたり、ヴィヴァルディ、バッハ、クープランなどバロック派以前の有名な作曲家の未発表作品を見つけ出し、編曲して数多くの発表していた。クライスラーがジョセフ・ラナーの曲を発表した時、ベルリンの評論家、レオポルド・シュミットは、その作品の演奏に対して、「曲はシューベルトに匹敵するものと称えつつ、一方でクライスラーの演奏はその曲の良さにそぐわない無神経なものだとこきおろした。クライスラーは、それに対して、「ラナーの作品がシューベルトに匹敵するなら、それを書いた私がシューベルトだ」と反論したという。(その当時シュミットはそのことを取り上げなかったが、後年クライスラーが偽作について全てを告白した時にそのことも明らかになった)

実際のところ、クライスラーの古典派を騙った作品は、その時代の様式には全く従っていなかったということで、多くの評論家たちはそれに気付かず評論していたということになる。

クライスラーが作曲した「フランクールのシチリアンヌ」のピアノソロ用編曲と演奏は下の通り。上のドゥシュキン作曲「パラディスのシチリアンヌ」以上に目まぐるしく和音が変化しており、古典派というより、ロマン派の曲だと言われても違和感はあまりない。

 

(Kreisler) Francoeur - Siciliana for piano solo by akof musescore.com

20170513 ピアノマニア弾き合い会 フランクールのシチリエンヌ(クライスラー) by Ako Fujiwaka | Free Listening on SoundCloud

クライスラーは、自作に他の作曲家の名前を冠した理由として、自作曲ばかりだと曲が注目されないからという主旨のことを言ったそうだ。これと同様の主旨のことは、(ポンセに偽作曲を書かせた)セゴビアや、(偽作を自作自演した)ヴァヴィロフも言っており、20世紀にはそういう「同じ作曲家ばかりとりあげる」ことを馬鹿にする風潮が音楽界にあったことをうかがわせる。

またクライスラーは、偽作についての非難に対し、(作曲家の)名前が変わろうとも、曲そのものの価値は不変であるとも述べている。有名な作曲家の名曲が、実は(名もなき)別の人物の手による偽作曲であると判明した途端、演奏機会が極端に減るということはあちこちで指摘されている(し、無名というわけではないが、日本でも新垣氏が佐村河内氏のゴーストライティングをしていたことが判明した途端、それら偽作曲の楽譜もCDも市場から完璧に消えた)が、クライスラーのこの言葉に私も同意する。

 

作曲者不詳=ケンプ編曲「バッハのフルートソナタ2番 BWV1031 2楽章」

もともとはヨハン・セバスチャン・バッハJ.S.バッハ)の作品とされてきたが、J.S.バッハの研究者から、J.S.バッハが用いなかったはずの技法がこの曲にはあると指摘され、J.S.バッハの作品ではないと看做されるようになった。そして、J.S.バッハの息子の1人、カール・フィリップエマヌエル・バッハの若き日の作品ではないかと暫くは言われていた。ところが、カール・フィリップエマヌエル・バッハの研究者からも、彼が使わない技法があると指摘され、この曲の作曲者がいよいよ分からなくなってしまった。今では、J.S.バッハの弟子が造った元曲を、J.S.バッハ達が監修するなどして手をいれたのではないかという、「バッハ・プロダクション」的な組織的な作曲集団が想像されることが多いようだ。

元曲は、フルートの伸びやかな旋律を、チェンバロの軽やかな伴奏が支える曲構造だが、ケンプが曲想を活かしつつ現代のピアノ用にしっかり手を入れた編曲が秀逸である。曲は素晴らしいが、演奏は曲の良さにそぐわない無神経なものだ。なお、この演奏では一部(24-25小節目および30-31小節目)、原曲に忠実なアルカンの編曲をとりいれている。

soundcloud.com

 

シチリア舞曲(シリーズ1回目)

「マニアックなピアノ曲を弾く会」で「イタリア」をテーマに何か演奏してくださいというお題が出たのだけど、困ってしまった。というのも、私はイタリア語も分からないし、イタリアに旅行に行ったこともない。イタリアの何かを表せるような文化的な繋がりが全くないのだ。

それても、テーマを何とかシチリア舞曲にしようと絞り込んで色々調べ始めた。イタリアのシチリア半島に起源を持つ舞曲で、ルネサンス期の終わり頃、16世紀にはこの形式の曲が残っている。

その形式は、8分の6拍子、ないしは8分の12拍子で、♩♪の付点リズムを基調とする(おそらく弦楽器の)伴奏が、シャーンシャン、シャーンシャンと刻んでいる上を、単旋律の楽器がこれまた特有の付点リズムをテーマにした、たゆたうメロディを物哀しく歌うというものだったようだ。

ルネサンス音楽バロック音楽に数多くのシチリア舞曲が書かれ、遅くとも古典派の時期にはシチリア地方どころかイタリア半島から離れた国の作曲家がこの形式の曲を書き始めたようだ。すると、シチリア舞曲の元々の形式は次第に緩んできて、8分の6の付点リズムのゆったりした曲ならシチリア舞曲だろという感じになってきたようだ。私の耳にはバルカローレとの差異があまり無いような曲もある。

シチリアとは何の縁もなさそうな(イタリアから見て)外国人が、伝統や形式を奔放に解釈して作った曲を、イタリアのことをよく知らない日本人の私が日本人の観客相手に演奏するのは、まぁ許されるのではないかと勝手に思った次第。

5月6日に開かれた第24回関西ツイッターピアノの会では、イタリアのオリジンから離れて自由に書かれたシチリア舞曲をとりあげた。

モーツァルト ピアノ協奏曲23番 K.488 2楽章 Adagio

古典派、オーストリアモーツァルト作曲の ピアノ協奏曲23番 K.488 2楽章 Adagioは、独走ピアノとオーケストラ伴奏のために書かれたシチリア舞曲形式の曲である。8分の6拍子、ゆったりとした独特の付点リズムは堅持されているが、独走も伴奏もバロック音楽時代のシチリア舞曲とは一線を画す自由さ、豊かさである。

ピアノ協奏曲であるからと、アマチュアピアノ奏者がこの名曲を弾かずにいるのはあまりに勿体無い。私が演奏したピアノソロ用の編曲の楽譜は

Mozart K.488 Piano Concerto #23 in A 2nd mov. Adagio for piano solo by akof musescore.com


においてある。

この編曲は演奏会用にかなり欲張った内容になっているが、もう少し気軽に弾きたいのなら、これよりシンプルにまとまった Reinecke 編曲版をお勧めしたい。imslpに置いてある。 

Piano Concerto No.23 in A major, K.488 (Mozart, Wolfgang Amadeus) - IMSLP/Petrucci Music Library: Free Public Domain Sheet Music
(pdfへの直接リンク:http://ks.imslp.info/files/imglnks/usimg/b/b4/IMSLP257555-PMLP15393-Mozart_Piano_Concerto_No23_in_A_major_K488__2H_Reinecke_.pdf

第24回関西ツイッターピアノの会@和歌山緑風舎での私の演奏が

20170506 第24回関西ついぴ モーツァルト ピアノ協奏曲23番K.488 2楽章 by Ako Fujiwaka | Free Listening on SoundCloud

においてある。

ボウエン シチリアーノ Op.128, No.1

後期ロマン派、イギリスのボウエンが作曲したこの曲は、旋律部分が単音ではなく、和音になっていて、シチリア舞曲に染み付いた「物哀しさ」から、さらに独特の風合いを出している。

楽譜はimslpにある

Siciliano and Toccatina, Op.128 (Bowen, York) - IMSLP/Petrucci Music Library: Free Public Domain Sheet Music

 第24回関西ツイッターピアノの会@和歌山緑風舎での私の演奏が

20170506 第24回関西ついぴ ボウエン シチリアーノ Op128 No1 by Ako Fujiwaka | Free Listening on SoundCloud

にある。

ケンプ編曲「フルートソナタ2番(BWV 1031)」の指使い

フルートソナタ2番(BWV 1031)を収録している「J.S.バッハ=ケンプ ピアノのための10の編曲」がメジャーらしいので、自分の悩み?をここに書いてしまう。

この曲を練習しようとしているのだが、主旋律をレガートに(、そして同時に伴奏のスタッカート部分をそれらしく)することが全くできずに七転八倒している。そこで、右手の重音部分を左手で一部とりにいくことにした。

色々試した挙句次のような譜表に示すような外道な手法に走っている。

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上の譜表の1段目、1小節目では、左手で、スタッカート部分の一部をとりにいくことにしている。これは、まぁよくある手なので、かろうじて許される範囲かなと思う。

譜表1段目3小節目、2段目2小節目も同様にスタッカート部分をとりにいく手法を試していたのだが、それでも右手親指(、あるいは左手が)強拍から2つ目の16分音符をとりにいくところが忙しすぎてどうにも綺麗に流れない。(無論、右手人差し指でとるのが王道だが、それで綺麗に主旋律がレガートにできるなら、こんな愚かな指使いを編み出そうとはしない)

そこで、編み出した外道技が、左手で主旋律の一部(赤丸で囲った音)をとりにいく方法である。これなら、なんとか「弾けないことはない」感触なので、これを今のところ採用して練習している。

が、もうちょっとマシな方法はないものだろうか……

ストラビンスキー"5つのやさしい小曲"、モンポウ"3つの遊び歌"

先週末の4月22日にカワイ梅田コンサートサロンジュエで開かれた「SHIGERUKAWAI普及演奏会@ゆる~く楽しもう」に参加して来た

ピアニストの長谷川美沙先生と連弾させていただく僥倖に恵まれた。
 
演奏曲として選んだのは、
ストラビンスキー作曲 "5つのやさしい小曲"から No.3 バラライカ, No.4 ナポリターナ、
モンポウ作曲 "3つの遊び歌"から No.1 馬車の上にはお人形、No.2 かささぎのマルゴ、No.3 月のなかの3匹の子ウサギ
 
いずれも1分程度の演奏時間の小曲。音を鳴らす指遣いという観点では極めて平易だが、曲想は魅力に溢れ、深みのある内容。そしてこれらは互いに似ているようで、2人の作曲家の和音遣いは全く対照的であり、曲調が異なる。
 
日頃は電子ピアノで練習していて、シゲルカワイの本物のタッチや音色に圧倒され戸惑った(そこを体験し、堪能するのがこの会の主旨でもあったはずだ)。
 
電子ピアノよりずっと重い鍵盤でのグリッサンドのコツを、リハの時に美沙先生には教えて頂いた。
 
また、ストラビンスキーの途中で、美沙先生の掻き鳴らす音響に陶然とさせられ、なのに自分の音が鳴らしきれない感触に苦しんだ。どうやら、その時美沙先生はソフトペダルを踏んでいたようなのだが、強音でのソフトペダルの音とはこういう強烈な効果があるのだと思い知った。無論これはシゲルカワイならではの音だったのだろう。
 
ということで、学びのとても多い会であった。主催のみっきーさん、合奏してくださった長谷川美沙先生に感謝申し上げたい。
 
ストラビンスキーの「5つのやさしい小品」(5 easy pieces)の楽譜はimslpにおいてあるが、パブリックドメインとみなされるのは米国内だけで、日本では厳密には著作権フリーではない。
 
モンポウの「3つの遊び歌」(Comptines)ピアノ連弾版の楽譜はBoileau社から出版されている(私はアカデミア・ミュージックから購入した)。元は歌曲なので、連弾したい人は歌曲用の楽譜を買ってしまわないようにご注意を。
 

偽作曲(シリーズ1回目)

実際の作者とは異なる作者名で世に知られた作品を、「偽作」と呼ぶ。佐村河内守の作品だと知られていた数々が、実は新垣隆氏がゴーストライティングしていたことが明らかになった、つい先日のスキャンダルも、その作品は「偽作」だったということになる。


実は偽作だと明らかになった非常に有名で優れた曲が、騙られた作者のものとして世に広まる経緯などを追うと、作品に対する思い入れ方も変わったりすることもあろう。ということで、偽作に焦点をあてて、とりあげていくのが本シリーズである。

 

ペツォールト作曲
「バッハのメヌエット ト長調 BWV Anhang 114」
「バッハのメヌエット ト短調 BWV Anhang 115」

真の作曲家ペツォールト(Christian Pezold, 1677年 - 1733年)は、ドイツで活躍したオルガン奏者である。J.S.バッハ作として広まったこの2曲を除けば、現在取り上げられる曲は殆ど書いていない。


偽りの作者、バッハ(Johann Sebastian Bach, 1685年 - 1750年)は、ペツォールトとほぼ同時代である。この曲が「偽作」になってしまった切っ掛けはJ.S.バッハにあるが、J.S.バッハは作曲者名を偽ろうとしたわけではなく、バッハの2人目の妻アンナ・マクダレーナにバッハが与えたノート、通称「アンナ・マクダレーナのための音楽帖」に書かれた多数の楽譜に、これらの曲が収められていたためである。バッハは、楽譜をこのノートに書くにあたって、作曲者名を付さずに書いていたため、後世このノートが知られた際に、すべての曲がJ.S.バッハの作だと誤解されてしまったのだ。このペツォールト作のメヌエットの他にも、BWVの114~132,509,515,516としてバッハの曲とされてきた作品は、今では偽作だと考えられている。


なお、「アンナ・マクダレーナのための音楽帖」について、バッハが亡くなった後に、アンナ・マクダレーナがバッハを想って書いたものという事実とは異なる設定に基づいたEsther Meynellの手によるフィクションが、日本では作者名とフィクションであることが伏せられ偽書となって出版されたため、日本では真実かのように広がってしまっているので注意が必要だ。

 

これら2曲の楽譜はimslpで入手できる。

Minuet in G major (Pezold, Christian) - IMSLP/Petrucci Music Library: Free Public Domain Sheet Music

Minuet in G major (Pezold, Christian) - IMSLP/Petrucci Music Library: Free Public Domain Sheet Music

 

2017年4月16日に開催された「ピアノマニア弾き合い会」 での私の演奏が、

20170416ピアノマニア弾き合い会「バッハのメヌエット ト長調 BWV Anhang 114」 by Ako Fujiwaka | Free Listening on SoundCloud

20170416ピアノマニア弾き合い会「バッハのメヌエット ト短調BWV Anh. 115(ペツォールト)」 by Ako Fujiwaka | Free Listening on SoundCloud

に置いてある。一応、「あーこの曲ね」の参考にしてもらえばと思う。

 

ヴァヴィロフ作曲
カッチーニアヴェ・マリア

偽られた作者カッチーニ(Giulio Caccini, 1545年頃 - 1618年)はイタリアの作曲家である。その時代まで主流だったポリフォニールネサンス音楽に代わる、モノディ形式と呼ばれる独唱スタイルの音楽を現し評判になったようだ。オペラ作品がいくつか今でも知られている。一方。真の作者ヴァヴィロフ(Vladimir Fiodorovich Vavilov, 1925年 – 1973年)はソ連のギタリスト・リュート奏者である。

 

ヴァヴィロフは、自作曲を演奏、録音する際に、自身の作とはせず、古典の作曲家名を付して発表することがしばしばあったようで、多数の偽作曲を残しており、いずれも騙った作曲家の作風や当時の音楽様式を全く気にしないものだった。そのため、騙られた作曲家の様式を知っている者にとっては、それが偽作であることは明らかなものばかりだと言う。「カッチーニアヴェ・マリア」は、1970年のヴァヴィロフの演奏の初録音によるCDでは作者不詳、1972年の演奏のCDではD.Cacciniの作(Giulio Cacciniとはイニシャルが異なる)として広まった。


ヴァヴィロフの親族の証言によれば、「自身の作として発表しても誰も聴いてくれないから」ということのようだが、この時期のソ連の状況では、「作曲」が政治的な困難を伴うことだった可能性もあろう。

ピアノソロ用の楽譜として、www.free-scores.comに掲載されているものが難度と効果のバランスが取れていて良いと思う。

www.free-scores.com

2017年4月16日に開催された「ピアノマニア弾き合い会」 での私の演奏は、

20170416ピアノマニア弾き合い会「カッチーニのアヴェマリア(ヴァヴィロフ)」 by Ako Fujiwaka | Free Listening on SoundCloud

かなりミスタッチが多いが……。

 

追記(2018.9.19):JASRACの作品データベースには、カッチーニアヴェ・マリア(の演奏)が複数登録されているが、いずれも
作曲者は"CACCINI GIULIO ROMANO"とされ、著作権は"消滅"、出版権は"PD"となっている。

 
ジャゾット作曲
アルビノーニアダージョ

偽られた作者アルビノーニ(Tomaso Giovanni Albinoni, 1671年 - 1751年)は、イタリアの作曲家であり、オペラや、器楽曲に多くの功績がある。一方、真の作者ジャゾット(Remo Giazotto, 1910年 – 1998年)はイタリアの音楽学者である。音楽学者なので、「アルビノーニアダージョ」以外の作品は全く知られていない。


イタリアのザクセン国立図書館は、第二次世界大戦の空襲を受けて被害を受け、古い楽譜が散逸し失われた。戦後、残された書籍や楽譜が集められ、再整理されたのだが、ジャゾットはアルビノーニの作品の再整理の作業に携わっていた。そのジャゾットが、ザクセン国立図書館から収集された資料の中から、アルビノーニが作曲したトリオソナタト短調の楽譜(の断片)が見つかり、それを復元ないしは編曲したものとして公表したのが、この「アルビノーニアダージョ」である。しかし、実際にはアルビノーニが書いたものは何ら使われていなかったことが後に明らかになった。

 

ジャゾットが亡くなった後、「アルビノーニの功績を世に知らせたかった」というジャゾットの意思が親族によって明らかにされたという言い伝えが残っているが、実際のところは定かではない。

 

この曲に関する著作権については様々な解釈がなされているが、その出版物について解説(Albinoni vs Giazotto – zagadka w tonacji g-moll. | drzoanna)から分かるように、この曲「アルビノーニアダージョ」についての著作権をジャゾットは放棄したものと私は解している。

 

ピアノ用にアレンジした楽譜を

(Giazotto) Albinoni - Adagio in G Minor for Piano by AkoFujiwaka musescore.com


に公開した。2017年4月16日に開催された「ピアノマニア弾き合い会」 で私が弾いた演奏はSoundCloudで聴ける。

 

soundcloud.com


今後も偽作曲をとりあげたいと考えている。

もりのくるみさんの思い出