読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

パステルナークの前奏曲

Борис Леонидович Пастернак (1890年2月10日-1960年5月30日)
Boris Leonidovich Pasternak、ボリス・レオニードヴィチ・パステルナーク)
の作品、前奏曲変ホ短調を演奏することにしたので、これについて調べているのだが、分からないことだらけで収集がつかなくなっているが、とりあえず情報をまとめてみる。

パステルナークは挿絵描きの父とピアニストの母に生まれ、近くに住んでいたスクリャービンに13歳の頃から約6年間作曲を学んで作曲家を志していたという。作曲家の道を諦めた理由が絶対音感が無いことからだという話が伝わっているが信憑性は定かではない。

この作曲家を目指していた頃の音楽作品のうち、少なくともピアノソナタと、2つの前奏曲がパステルナークの死後に出版されて広く知られている。他に残っている曲があるのかどうか、私には具体的な曲は見つけられかった。

2つの前奏曲はいずれも1906年、パステルナークが16歳の時に書いたものとされている。前奏曲の楽譜は、ある特定の版がインターネットで配布されているが、これの出版情報は明らかでない。日本を含む、著作権の保護期間が死後50年までの国ではパステルナークの作品の著作権は1915年現在切れていると考えられるので、これらの楽譜の配布は著作権的には問題ないと思われるが、保護期間が死後70年までの国々ではまだ著作権は有効で、そのためグレーな配布形態が多いのかも知れない。私の手元にある楽譜もこのインターネット配布版と同一のもののようだ。

2つの前奏曲はN. Bogoslovskyの編纂した版があることが知られているが、インターネット配布版がこれにあたるのかどうかは情報が得られなかった。

ピアノソナタもインターネットで前奏曲と同様に配布されているが、これは、
Sonata for Piano, cd. N. Bogoslovsky, Moscow, 1979.
の版のようである。

前奏曲の楽譜を出版して欧米に紹介したのは、Christopher J. Barnesのようで、1977年だと思われる。しかし、初出の掲載書籍がはっきりしない。楽譜が掲載されている可能性があるのは、次の5種類。(1と3は同一書籍の可能性がある)
1.SELECTED PERIODICAL PUBLICATIONSUNCOLLECTED: “Prelude,” in “Boris Pasternak, the Musician-Poet and Composer,” by Christopher Barnes, Slavica Hierosolymitana, 1 (1977): 330-335;
2.Tempo No. 121. 1977, June. P. 13–19; Id, Boris Pasternak: The Musician-Poet and Composer
3.Barnes, C. J. "Boris Pasternak, the Musician" (1977), 330-35
4.Barnes, C. J. "Pasternak as Composer" (1977), 22-5
5.Ashkenazy, V. and Voskobojnikov, V. (1983)

2つの前奏曲のインタネット配布版であるが、嬰ト短調の方は、臨時記号抜けが少なくとも2箇所ある。そもそも、嬰ト短調(の元譜)はピアノ演奏を思い描いて書いたのではなく、例えば管弦楽に展開するための草稿だったのかもしれないように私は感じる。というのも、ピアノ演奏には技術的に、あるいは音響的に向かないような音形の場所が複数ある。そのため、どのような経緯で楽譜が出版されたのかは知りたいところなのだが、私のつたない調査力ではこの辺が限界である。