新疆ウイグルのための祈り:「沙里洪巴」
魏樂富: 「戲(徳布西華麗曲)」
これまで、
- カタルーニャの人々に祈るためアリオの「収穫人たち」 やカザルスの「鳥の歌」 を、
- 焼けたノートルダム大聖堂の復興を祈るために、パレストリーナの「アヴェ・マリア」 を、
- 香港の人々に祈るために、「願榮光歸香港」 を 、
とりあげ演奏してきた。
そして、ずっと気になっていたのが、新疆ウイグルの人々のことだ。なんとか新疆ウイグルの人々の心の歌、あるいは音楽をとりあげたいと思いつつ、私が演奏できそうな曲を探すことができずにずっといた。
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ところが、ある日ふと、変わった「多国籍」な曲を発見した。
ドイツ生まれの Rolf-Peter Wille が、台湾人の女性 葉綠娜 と結婚して台湾に帰化して 魏樂富 という名になり、フランス人であるドビュッシー(徳布西)の「アラベスク」と、中国の民謡として有名な駱駝の曲とをマッシュアップした2台ピアノのための曲という、ドイツ、台湾、フランス、中国の4ケ国が詰め込まれた曲である。これを(冒頭に示したように)日本人である私が弾けば5ケ国競演である。
さて、オリジナルの中国の民謡として有名な駱駝の曲ってどういう曲なんだろうと調べてみた。すると、この駱駝の曲とは、「沙里洪巴」(シャリホンバ)という曲名で知られる新疆民歌なのだそうだ。
「沙里洪巴」は、新疆の歌ではあるが、中国本土はもちろん、台湾でも非常に有名で、鄧麗君(テレサ・テン) がデビュー直後の15歳頃に歌っている。
沙里洪巴 1968 鄧麗君
歌詞の日本語訳を見ると分かるように、駱駝に乗る旅人への語りかけのような内容で、この「シャリホンバ」という合いの手のように入る言葉は問候語(挨拶)なのだとのこと。新疆は、シルクロードのルートの一つにあたり、駱駝にのる旅人とはそこを行きかう交易商人のことなのかも知れない。
新疆ウイグルの地域が、再び世界中の人が行き交う活気ある場所になることを願わずにはいられない。