「震災時、米の原発安全策「秘匿」 保安院課長も見られず」の胡散臭さ
「震災時、米の原発安全策「秘匿」 保安院課長も見られず」の胡散臭さ
まず、以下の話を分析してみよう。
秘匿された情報は、2001年の9・11同時多発テロを受け、米政府が自国の原発に義務づけた対策の内容で「B5b」と呼ばれる。
全電源喪失に備え、
(1)持ち運びできるバッテリーの配備
(2)ベント弁や炉心冷却装置を手動で動かす手法の確立
(3)手順書の整備や作業員の訓練
――といった対策を具体的に
全電源喪失のリスクが、秘密ではなく、日本でも知られているならば、その対策手法に
- 持ち運びできるバッテリーの配備
- ベント弁や炉心冷却装置を手動で動かす手法の確立
- 手順書の整備や作業員の訓練
が必要だということが、独自に考えてわからないはずはない。原子力発電所の大まかな原理を知っている大学生でも、テストの一日前に考えればすぐに思いつくようなことだからだ。
では、「全電源喪失のリスク」自体が秘密なために、日本では知られていなかったのか?そんなことはない。2006年5月、10月および12月に、衆議院内閣委員会で共産党の吉井英勝氏が、津波のリスクとともに、「全電源喪失のリスク」を指摘し、対策を質問している。
当然、政府はその質問に回答する答弁を考えているのだから、そのリスクについて知らないなんてことはありえない。
当時の原子力安全・保安院の寺坂信昭院長は
外部電源がすべて喪失されて、非常用の所内電源、ディーゼル発電機、隣の発電所からの電源融通もできないとか、いろいろな悪い事態が、非常に小さい確率ながらも一つ一つ、全部実現をして、それで外部電源が全部喪失されて冷却機能が失われるということになると、もちろんその時間にはよるが、長時間にわたると炉心溶融とかそういったことにつながるというのは、論理的には考え得る
と答えたらしい。それでも全電源喪失ののリスクを知らなかったと言えるか?
参照:
- 共産党議員が国会で警告していた 「外部電源喪失」そして「炉心溶融」 : J-CASTニュース
- 河北新報ニュース 第1部・不作為(2)過信/全電源喪失、直視せず
- 福島原発事故を予測した吉井英勝・日本共産党衆院議員
従って、“震災時、米の原発安全策が「秘匿」されていたから”全電源喪失の対応ができなかったという言い訳は、全電源喪失の対応ができるはずだったのに、しなかった責任を負うべき人物や組織が、責任回避のために「知らなかった」音頭を目くらましに踊って誤魔化そうとしてるのだとしか考えられない。
全電源喪失のリスクを指摘され、認識しているにも関わらず、対策しなかった組織はどこですか。今回、全電源喪失のリスクについて米国が秘匿していたから、自分達は知らなかったと主張している組織はどこですか。その2つの組織、まさか一致したりはしてませんか。
班目氏は、これまでの原発の安全指針は、津波に対する対策がないなど「明らかに誤りがあった」と発言。アメリカで全電源喪失への対応など安全基準を高める動 きがあったのに、「日本では、なぜそれをやらなくていいのかという言い訳づくりばかりやっていた」と、実態を明らかにしました。
つまり、今もなお、全電源喪失への対策をやらなかった言い訳づくりをしているということですね。