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法廷での人の命の重み

桜宮高校2年バスケット部員の自殺に繋がった体罰で、被告人に懲役1年、執行猶予3年の地裁判決が出たそうだ。

人の命が亡くなっているのにと思うと、この判決には割り切れない理不尽を感じる。

ペットを虐待死させると、動物愛護法違反で、最高刑はは懲役1年だ。動物愛護法違反だけで本当に懲役1年なんて実際あるのかと疑問に思うかもしれないが、ちゃんと猫4匹を虐待死させた動物愛護法違反の罪で、懲役1年執行猶予3年とした裁判例も知られている。
http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h2203/full.pdf

つまり、この2つの裁判例を比較すれば、
  人間一人の命<猫4匹の命
という判断になっているように見えても仕方あるまい。

猫の「愛玩動物」性に着目して、それを抹殺すれば最高刑懲役1年だが、猫を「器物」と見なせば器物損壊罪は最高刑が懲役3年に跳ね上がる。同じ猫殺しでも、猫1匹を毒殺した場合に対し、器物損壊罪が適用されて懲役1年4月執行猶予3年の地裁裁判例が知られている。
http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h1903/pdf/full.pdf

これを鑑みれば
  人間の命<猫の命<器物
という判断が下されていると訝しく感じられてしまう。

器物損壊罪の最高刑3年だが、文化財保護法違反は最高刑は懲役5年になる。同じ「物」でも貴賎があって、それは人や動物の命より尊いこともあるらしい。奈良の国宝・重文損壊の事件では懲役3年の実刑判決だ。
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080421110919.pdf

なお、文化財保護法保護対象とするのは歴史的な意味でかけがえのない無生物だけではなく、動物の命のこともあって、奈良の鹿をボーガンで射殺した事件は文化財保護法違反が適用されて、実行犯には懲役6月の実刑判決(執行猶予なし)が言い渡されている。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1801L_Y0A610C1CC0000/

もしもトキ(ニッポニア・ニッポン)が(農作物を荒らすとかなんとかの理由で)毒殺したら、懲役5年もあるのかもしれない。(トキは文化財保護法に基づき指定される「天然記念物」である)

ここまでの疑念を整理すると、
  人間の命<猫の命<器物<文化財
ではないかということになる

さて、桜宮高校の体罰事件にたちかえると、罪状は傷害と暴行の罪でしかないことに気づく。被害者が自殺したことは、情状にしか考慮されてないのだ。つまり、判決を考える上で、人の命が亡くなったことは、殆ど考慮されていないといってよい。情状というのは、親が法廷で泣いて訴えたとかその程度の話と同じ扱いだ。

もしも、この体罰事案が、「このような体罰を続ければ、自殺することがひょっとして有り得るかもしれないと分っていて、それでも指導することの方が重要だ」とか考えて体罰していたという自殺幇助、あるいは「そんなんだったら、死んでしまえ」と言ったという自殺教唆の罪を検察が立証していれば、全く違った判決になっていたかもしれない。

自殺幇助の罪は6月以上7年以下の懲役又は禁錮だ。実際、自殺幇助で懲役2年(執行猶予3年)の裁判例もある。 http://hanrei.biz/h12208

検察が、自殺関与の罪について、立証しようと試みたという話は全く聞かない。桜宮高校で体罰を受け「その結果」、自殺で亡くなった生徒さんの命を、軽んじて無視したのは、法や裁判ではなく、検察だったような気がしてならない。