ストラビンスキー"5つのやさしい小曲"、モンポウ"3つの遊び歌"

先週末の4月22日にカワイ梅田コンサートサロンジュエで開かれた「SHIGERUKAWAI普及演奏会@ゆる~く楽しもう」に参加して来た

ピアニストの長谷川美沙先生と連弾させていただく僥倖に恵まれた。
 
演奏曲として選んだのは、
ストラビンスキー作曲 "5つのやさしい小曲"から No.3 バラライカ, No.4 ナポリターナ、
モンポウ作曲 "3つの遊び歌"から No.1 馬車の上にはお人形、No.2 かささぎのマルゴ、No.3 月のなかの3匹の子ウサギ
 
いずれも1分程度の演奏時間の小曲。音を鳴らす指遣いという観点では極めて平易だが、曲想は魅力に溢れ、深みのある内容。そしてこれらは互いに似ているようで、2人の作曲家の和音遣いは全く対照的であり、曲調が異なる。
 
日頃は電子ピアノで練習していて、シゲルカワイの本物のタッチや音色に圧倒され戸惑った(そこを体験し、堪能するのがこの会の主旨でもあったはずだ)。
 
電子ピアノよりずっと重い鍵盤でのグリッサンドのコツを、リハの時に美沙先生には教えて頂いた。
 
また、ストラビンスキーの途中で、美沙先生の掻き鳴らす音響に陶然とさせられ、なのに自分の音が鳴らしきれない感触に苦しんだ。どうやら、その時美沙先生はソフトペダルを踏んでいたようなのだが、強音でのソフトペダルの音とはこういう強烈な効果があるのだと思い知った。無論これはシゲルカワイならではの音だったのだろう。
 
ということで、学びのとても多い会であった。主催のみっきーさん、合奏してくださった長谷川美沙先生に感謝申し上げたい。
 
ストラビンスキーの「5つのやさしい小品」(5 easy pieces)の楽譜はimslpにおいてあるが、パブリックドメインとみなされるのは米国内だけで、日本では厳密には著作権フリーではない。
 
モンポウの「3つの遊び歌」(Comptines)ピアノ連弾版の楽譜はBoileau社から出版されている(私はアカデミア・ミュージックから購入した)。元は歌曲なので、連弾したい人は歌曲用の楽譜を買ってしまわないようにご注意を。
 

偽作曲(シリーズ1回目)

実際の作者とは異なる作者名で世に知られた作品を、「偽作」と呼ぶ。佐村河内守の作品だと知られていた数々が、実は新垣隆氏がゴーストライティングしていたことが明らかになった、つい先日のスキャンダルも、その作品は「偽作」だったということになる。


実は偽作だと明らかになった非常に有名で優れた曲が、騙られた作者のものとして世に広まる経緯などを追うと、作品に対する思い入れ方も変わったりすることもあろう。ということで、偽作に焦点をあてて、とりあげていくのが本シリーズである。

 

ペツォールト作曲
「バッハのメヌエット ト長調 BWV Anhang 114」
「バッハのメヌエット ト短調 BWV Anhang 115」

真の作曲家ペツォールト(Christian Pezold, 1677年 - 1733年)は、ドイツで活躍したオルガン奏者である。J.S.バッハ作として広まったこの2曲を除けば、現在取り上げられる曲は殆ど書いていない。


偽りの作者、バッハ(Johann Sebastian Bach, 1685年 - 1750年)は、ペツォールトとほぼ同時代である。この曲が「偽作」になってしまった切っ掛けはJ.S.バッハにあるが、J.S.バッハは作曲者名を偽ろうとしたわけではなく、バッハの2人目の妻アンナ・マクダレーナにバッハが与えたノート、通称「アンナ・マクダレーナのための音楽帖」に書かれた多数の楽譜に、これらの曲が収められていたためである。バッハは、楽譜をこのノートに書くにあたって、作曲者名を付さずに書いていたため、後世このノートが知られた際に、すべての曲がJ.S.バッハの作だと誤解されてしまったのだ。このペツォールト作のメヌエットの他にも、BWVの114~132,509,515,516としてバッハの曲とされてきた作品は、今では偽作だと考えられている。


なお、「アンナ・マクダレーナのための音楽帖」について、バッハが亡くなった後に、アンナ・マクダレーナがバッハを想って書いたものという事実とは異なる設定に基づいたEsther Meynellの手によるフィクションが、日本では作者名とフィクションであることが伏せられ偽書となって出版されたため、日本では真実かのように広がってしまっているので注意が必要だ。

 

これら2曲の楽譜はimslpで入手できる。

Minuet in G major (Pezold, Christian) - IMSLP/Petrucci Music Library: Free Public Domain Sheet Music

Minuet in G major (Pezold, Christian) - IMSLP/Petrucci Music Library: Free Public Domain Sheet Music

 

2017年4月16日に開催された「ピアノマニア弾き合い会」 での私の演奏が、

20170416ピアノマニア弾き合い会「バッハのメヌエット ト長調 BWV Anhang 114」 by Ako Fujiwaka | Free Listening on SoundCloud

20170416ピアノマニア弾き合い会「バッハのメヌエット ト短調BWV Anh. 115(ペツォールト)」 by Ako Fujiwaka | Free Listening on SoundCloud

に置いてある。一応、「あーこの曲ね」の参考にしてもらえばと思う。

 

ヴァヴィロフ作曲
カッチーニアヴェ・マリア

偽られた作者カッチーニ(Giulio Caccini, 1545年頃 - 1618年)はイタリアの作曲家である。その時代まで主流だったポリフォニールネサンス音楽に代わる、モノディ形式と呼ばれる独唱スタイルの音楽を現し評判になったようだ。オペラ作品がいくつか今でも知られている。一方。真の作者ヴァヴィロフ(Vladimir Fiodorovich Vavilov, 1925年 – 1973年)はソ連のギタリスト・リュート奏者である。

 

ヴァヴィロフは、自作曲を演奏、録音する際に、自身の作とはせず、古典の作曲家名を付して発表することがしばしばあったようで、多数の偽作曲を残しており、いずれも騙った作曲家の作風や当時の音楽様式を全く気にしないものだった。そのため、騙られた作曲家の様式を知っている者にとっては、それが偽作であることは明らかなものばかりだと言う。「カッチーニアヴェ・マリア」は、1970年のヴァヴィロフの演奏の初録音によるCDでは作者不詳、1972年の演奏のCDではD.Cacciniの作(Giulio Cacciniとはイニシャルが異なる)として広まった。


ヴァヴィロフの親族の証言によれば、「自身の作として発表しても誰も聴いてくれないから」ということのようだが、この時期のソ連の状況では、「作曲」が政治的な困難を伴うことだった可能性もあろう。

ピアノソロ用の楽譜として、www.free-scores.comに掲載されているものが難度と効果のバランスが取れていて良いと思う。

www.free-scores.com

2017年4月16日に開催された「ピアノマニア弾き合い会」 での私の演奏は、

20170416ピアノマニア弾き合い会「カッチーニのアヴェマリア(ヴァヴィロフ)」 by Ako Fujiwaka | Free Listening on SoundCloud

かなりミスタッチが多いが……。

 

追記(2018.9.19):JASRACの作品データベースには、カッチーニアヴェ・マリア(の演奏)が複数登録されているが、いずれも
作曲者は"CACCINI GIULIO ROMANO"とされ、著作権は"消滅"、出版権は"PD"となっている。

 
ジャゾット作曲
アルビノーニアダージョ

偽られた作者アルビノーニ(Tomaso Giovanni Albinoni, 1671年 - 1751年)は、イタリアの作曲家であり、オペラや、器楽曲に多くの功績がある。一方、真の作者ジャゾット(Remo Giazotto, 1910年 – 1998年)はイタリアの音楽学者である。音楽学者なので、「アルビノーニアダージョ」以外の作品は全く知られていない。


イタリアのザクセン国立図書館は、第二次世界大戦の空襲を受けて被害を受け、古い楽譜が散逸し失われた。戦後、残された書籍や楽譜が集められ、再整理されたのだが、ジャゾットはアルビノーニの作品の再整理の作業に携わっていた。そのジャゾットが、ザクセン国立図書館から収集された資料の中から、アルビノーニが作曲したトリオソナタト短調の楽譜(の断片)が見つかり、それを復元ないしは編曲したものとして公表したのが、この「アルビノーニアダージョ」である。しかし、実際にはアルビノーニが書いたものは何ら使われていなかったことが後に明らかになった。

 

ジャゾットが亡くなった後、「アルビノーニの功績を世に知らせたかった」というジャゾットの意思が親族によって明らかにされたという言い伝えが残っているが、実際のところは定かではない。

 

この曲に関する著作権については様々な解釈がなされているが、その出版物について解説(Albinoni vs Giazotto – zagadka w tonacji g-moll. | drzoanna)から分かるように、この曲「アルビノーニアダージョ」についての著作権をジャゾットは放棄したものと私は解している。

 

ピアノ用にアレンジした楽譜を

(Giazotto) Albinoni - Adagio in G Minor for Piano by AkoFujiwaka musescore.com


に公開した。2017年4月16日に開催された「ピアノマニア弾き合い会」 で私が弾いた演奏はSoundCloudで聴ける。

 

soundcloud.com


今後も偽作曲をとりあげたいと考えている。

もりのくるみさんの思い出

イタリアの作曲家の偽作

弾き合い会で、「イタリア」をテーマにという話があったのだけれども、「イタリア人作曲家による曲」を演奏しようという指定ではないことに気づいた。そこで、ちょっと捻ったことはできないかなと、「イタリア人作曲家の曲だと偽って発表された作品」を探してみた。

 

いくつか良い曲も見つかったので、結果をまとめておく。


アルビノーニ(Albinoni)の偽作
レモ・ジャゾット(Remo Giazotto)による「アルビノーニアダージョ」"Adagio in G minor by Albinoni"(1958年に出版)

https://musescore.com/user/99401/scores/900171
https://musopen.org/ja/sheetmusic/12394/tomaso-albinoni/adagio-in-g-minor/


ヴィヴァルディ(Vivaldi)の偽作
Nicolas Chédeville ニコラ・シェドヴィルによる「忠実な羊飼い」"IL PASTOR FIDO,OP.13,VOL.3 RV55.58"
http://imslp.org/wiki/Il_pastor_fido,_Op.13_(Ch%C3%A9deville,_Nicolas)


カッチーニ(Caccini)の偽作
ウラディーミル・ヴァヴィロフ(Vladimir Vavilov)による「カッチーニアヴェ・マリア」"Ave Maria by Caccini"
https://musescore.com/user/16638/scores/28604
http://www.free-scores.com/download-sheet-music.php?pdf=29281


ペルゴレージ(Pergolesi)の偽作
パリゾッティ(Alessandro Parisotti)による"Se tu m'ami"
http://imslp.org/wiki/Arie_Antiche_(Parisotti,_Alessandro)
Vol.1 22番目の曲(p.102)

 

いずれも良い曲ではあるけれど、「知られざる佳曲」という訳ではないので、会の主旨には合わないかなぁということで。

2016年 弾いた曲

1/9 第2回超有名曲会
バダジェフスカ乙女の祈り

1/26 第5回みんなの音楽祭 デュカス=ロケ 「魔法使いの弟子」(ピアノ連弾版)(はるかさんと)

2/13 第19回関西ツイッターピアノの会
ブランシェ 3つのピアノの小品「トルコ」Op.18より No.3 「古い後宮の庭」

4/23 第7回北陸ついぴの会
ペルト「アリヌシュカの癒しによる変奏曲」、「アリーナのために」

5/14 第20回関西ツイッターピアノの会
ペルト「アリヌシュカの癒しによる変奏曲」、「アリーナのために」

5/28 第21回ついぴ名古屋
ペルト「アリヌシュカの癒しによる変奏曲」、「アリーナのために」

9/3 第21回 関西ツイッターピアノの会
モンポウ=マインダース 「君の上にはただ花ばかり」(ピアノソロ版)
パラディス 「シチリアーナ」(Vn. セルジオさんと)

11/19 第23回 ついぴ名古屋
サティ 夜想曲1番〜3番

11/26 第22回 関西ツイッターピアノの会
サティ 夜想曲1番〜5番
モーツアルト バイリンコンチェルト第5番1楽章 (Vn. ゆかさんと)

12/11 ゼフィルス音楽フォーラム
モンポウ=マインダース 「君の上にはただ花ばかり」(ピアノソロ版)
シャリーノ「アナモルフォジ」

12/18 ピアノマニア弾き合い会
ザイツ バイリンコンチェルト2番(Vn. ゆかさんと)

「株式会社はてな」はこんなことで良いのでしょうか?

 

 

 

 
無論、piyokango 氏の主張する「はてなが『従わない場合はサービスを強制的に非公開とする』としてきた」というのがまるきり嘘という可能性もあるわけですが、それならそれで株式会社はてなは「そんなことはしてない」とし、それなりの対応をすべきであるわけで、いずれにしても、株式会社はてなはやってることがおかしいのではないのか?と思うわけです。

追記:piyokango氏から補足説明のツイートがありました。


これを読む限り、体裁としては、株式会社はてなはプロバイダー責任法に沿った対応をしてる形になってます。ただ、さらにはてなの規約を見ると、今回のこの対応はやはり疑問符をつけざるを得ないように思えます。そこらあたり踏み込んだ議論はまた今後。追記ここまで。

さて、もう一つ、しっかと書いておくべきことがあります。


piyokango氏のツイートによれば、『Baiduの提供するIMEWindows向けの「Baidu IME」とAndroid OS向けの「Simeji」を通じて端末に入力した情報が同社のサーバーへ送信されている と報じられました。ここではBaidu社の日本語入力ソフトの情報送信問題についてまとめます。』という表現に対して、バイドゥ株式会社は、名誉毀損業務妨害に相当するため削除申立するのだそうです。

ツイートパクリで記事一丁上がり、らしい

R25の“フェイスブックは「おっさんが自慢する場所」?”という記事をたまたま見たのだが、パクツイしまくりの剽窃記事でワロタ。

こんなセコイ記事かいてる「小浦大生」って何者?(ググっても出てこないから、インチキライターの捨て名前だろうな)

パクリ元は以下の通り。